被爆の記憶、次の時代へ=活動担う若者育成-原爆ドーム基金30年・広島

社会

国内外から訪れる観光客や世界の政治指導者に平和の尊さを訴えてきた広島市の世界遺産・原爆ドーム。保存工事のために集めた資金の余りを原資に、市が「原爆ドーム保存事業基金」を創設してから30年になる。資金は次代の平和活動を担う若者の育成にも充当。平成から次の時代へ、被爆の記憶を伝える力にしたい考えだ。

爆心地から約130メートルにあった原爆ドームは、爆風と熱線による火災で大破したが、奇跡的に倒壊は免れた。原爆の威力を伝える建物を後世に残そうと、市は保存工事費用を調達するため、全国募金を実施した。

1990年3月末には目標額の3倍を超える3億9500万円が集まった。市は余剰金約3億円を元に基金を創設。その後も企業や個人による寄付などを積み立て、基金残高は2018年末で約4億2100万円に上る。

耐震工事などに充てる他、16年からは国内外の若者を広島に招き、被爆者の体験を学んでもらう事業にも活用している。17年8月には、「平和首長会議」加盟都市の高校生や大学生ら6カ国の6人を招待。参加者は平和貢献をテーマにした地元学生との交流イベントや6日の平和記念式典に参加した。

イベント後、参加者からは「広島と長崎の教訓を心に留めておくことが大切だ」「得た知識をできるだけ多くの人に広め、平和な未来を築く努力をする」などの感想が寄せられた。

市職員として募金活動に奔走した被爆者の原田浩さん(79)=同市安佐南区=は「市長や市議会議長らが街頭で募金を呼び掛け、3カ月で1億円が集まった。多くの人が関心を持ち、(ドームを)残したいという意志が表れたのだと思う」と振り返る。

市平和推進課の松嶋博孝課長は「物言わぬ証人としての役割を果たすドームも、いつか風化する。次世代の若者が被爆の実相を守り、伝える必要がある。基金はそのための原資だ」と強調。次の時代も、核兵器廃絶の世論醸成や若者への継承に役立つ事業に活用する意向だ。

平和について話し合う国内外の若者=2017年8月、広島市中区(広島平和文化センター提供)平和について話し合う国内外の若者=2017年8月、広島市中区(広島平和文化センター提供)

取材に応じる被爆者の原田浩さん=1月15日、広島市中区の平和記念公園取材に応じる被爆者の原田浩さん=1月15日、広島市中区の平和記念公園

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