被災企業、復興へ団結=水産物、ライバルと販路開拓-宮城・東日本大震災8年

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東日本大震災から8年が経過し、津波で甚大な被害を受けた宮城県では農家や水産加工業者が地域で団結し、復興に向けた動きを加速している。国や自治体も支援を強化し、売上高は着実に回復。ライバル同士が協力した新たな水産物の販路の開拓や、経営の規模拡大に取り組んでいる。

◇ライバルが協力

水産庁によると、被災した宮城県の水産加工施設のうち、営業再開を希望した事業者は2017年末時点でほぼすべて再起にこぎ着けた。一方、宮城県によると、水産加工業者の売り上げを震災前の水準に戻すにはまだ時間が必要で「業者は新規の販路開拓に活路を見いだそうとしている」(水産業振興課)という。

「地元の名産品が一度に見られるので、県外の友人にお土産を買うときに便利」。宮城県石巻市の被災した水産加工業者など10社が運営するアンテナショップ「石巻うまいものマルシェ」を訪れた、地元に住む20代の女性客はこう話す。

マルシェにはレトルトのカキグラタンや地ビールなど地元食材を使った約600アイテムが所狭しと並ぶ。最近の売れ筋は高級茶漬け「石巻金華茶漬け」だ。鮮度を維持する密封技術や風味を保つ加工ノウハウを10社で開発、共有した。サンマやアナゴなど7種類をそろえ、上品な藍色の包装紙の裏には石巻湾の地図を印刷した。今秋から日本航空の国際線機内食に採用される。

マルシェは13年に前身の協議会が設立され16年に本格的に立ち上がった。主要メンバーで、煮魚などのレトルト食品の製造を手掛ける山徳平塚水産(宮城県石巻市)の平塚隆一郎社長は「以前はライバルだったが、震災後に漁港で後片付けをやるうちに連帯感が強まった」と振り返る。マルシェ代表で食品加工業MCF(同)の佐藤芳彦社長も「大手と違った手作り感で勝負したい」と意気込み、口コミで市場に浸透させたい考えだ。

◇被災農地を集約

仙台市では被災農地の集約で経営の大規模化も進む。甘さが特徴の「井土ねぎ」を栽培する井土生産組合(仙台市)は震災後に農地整備を実施。計100ヘクタールでネギやコメなどの生産を再開し、畑の1区画は1ヘクタールと震災前の10倍に拡大した。大型機械の導入による栽培効率化などが奏功し、仙台市の学校給食に自慢のネギが採用されている。

同組合は津波で被害を受けた地元農家が12年に立ち上げた。震災前はレタスも育てていたが、津波の影響で土壌内に残る塩分に強いネギに切り替えた。現在は社員4人をはじめ常時20人が働く。

震災直後は多くの地元農家が農業機械を新規購入できないという理由で引退していったが、代表の鈴木保則さんは「先祖伝来引き継がれてきた土地を台無しにするわけにはいかない」と踏みとどまった。鈴木さんは「日本を代表する有力ブランドの仲間入りをしたい」と言葉に力を込める。

宮城県石巻市の被災業者らが設立したアンテナショップ「石巻うまいものマルシェ」で、共同開発の高級茶漬けを手に取る地元の買い物客=2018年12月、同市宮城県石巻市の被災業者らが設立したアンテナショップ「石巻うまいものマルシェ」で、共同開発の高級茶漬けを手に取る地元の買い物客=2018年12月、同市

井土生産組合によるネギの収穫作業=2018年12月、宮城県仙台市井土生産組合によるネギの収穫作業=2018年12月、宮城県仙台市

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