新産業創出、理想と現実に差=人材育成遅れ、経済効果未定-福島イノベーション構想

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東京電力福島第1原発の事故で甚大な被害を受けた福島県で、再生可能エネルギー、ロボットなどの新産業を興す「福島イノベーション・コースト構想」が進められている。安倍晋三首相が「福島復興の切り札」と位置付けるプロジェクトだが、先端技術の受け皿づくりや人材育成などは遅れ、経済効果の試算も出ていない。復興への貢献が期待されるものの、理想と現実の差が横たわる。

構想は東日本大震災後の2014年から本格的に動きだした。最先端の技術・産業を集積するのが狙いだが、分野ごとの目標や地元への経済効果は現在でも明確になっていない。県の担当者は「構想は幅広い分野に及び、新しい取り組みも多い」と策定作業の難しさを認める。原発事故の影響で将来が十分見通せない地域もあり、展望を描き切れていない。

一方で、県沿岸部の自治体では原発の廃炉技術の研究開発や水素製造実証実験、浮体式洋上風力発電などの施設整備が着々と進む。昨年7月にはロボットの研究開発拠点「福島ロボットテストフィールド」が南相馬市で一部開所した。これに伴い、日本原子力研究開発機構や楽天などが同市や隣の浪江町に拠点を設置している。

ただ、福島大学の初沢敏生教授(経済地理学)は「地元企業の技術力と、構想が求めている水準の差が大きい」と話す。ロボットはソフトウエアによる制御が重要だが、「技術を持つ会社は少ない」と指摘。震災と原発事故で人材が流出していることもあり、地元で活躍する技術者の育成が喫緊の課題となっている。

昨年12月、福島県や関係省庁の幹部、大学教授らが集まって開かれた会議でも地元から人材育成への協力を求める声が相次いだ。川内村の遠藤雄幸村長は、再生可能エネルギーによる発電を例に挙げ、「身近なところで技術者を養成し、部品を準備しておくことも必要だ」と訴えた。

県は今夏、南相馬市に地元企業への技術支援を行う「ハイテクプラザ南相馬技術支援センター」を新設する方針だ。初沢教授は「ようやくできる拠点で(地元企業の技術を磨く)機能を発揮してほしい」と期待を込める。

ロボットの研究開発拠点「福島ロボットテストフィールド」で進む施設整備=2月15日、福島県南相馬市ロボットの研究開発拠点「福島ロボットテストフィールド」で進む施設整備=2月15日、福島県南相馬市

有線ドローンで上空からの映像を確認しながら進む建設ロボット=2018年11月2日、福島県南相馬市有線ドローンで上空からの映像を確認しながら進む建設ロボット=2018年11月2日、福島県南相馬市

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