謎の元号「てんせい」、漢字も3種類=幕末の高知、口頭で伝承?

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日本の歴史上、採用されたことがない「てんせい」と読む元号が、高知県内の石造物や文書などに残されている。漢字表記は「天晴」「天政」「天星」の3種類。「明治」に改元される直前に土佐藩の一部集落で使われていたことが分かっているだけで、詳細は謎だらけだ。

県立高知城歴史博物館(高知市)などによると、県東部の田野町から西部の四万十町までの陸路約120キロの範囲に散らばる4市4町の集落で、使われていたことが確認されている。見つかった資料は13件あり、うち11件を「天晴」が占める。

石造物には十干十二支などが一緒に刻まれており、「てんせい元年」はいずれも慶応3(1867)年と一致。ただ、他の地域では翌68年の明治改元まで、慶応が続いていた。

長年、石造物の研究を続けている県立歴史民俗資料館(同県南国市)の前副館長浜田真尚さん(61)=同市=は「慶応2年末に孝明天皇が逝去しており、改元があってもおかしくないという状況下、大政奉還など政治的な混乱があったことも関係しているのでは」と推測。さらに「字が異なるのは、複数の人が口頭で各地に伝えた可能性がある」と指摘した。

地域の歴史や文化財を調査するNPO「地域文化計画」(高知市)副理事長の中村茂生さん(54)=同市=も「普通、元号に『晴』や『星』の字は使わない。ただ、『天政』は慶応に改元する際、最終案として挙がったことがある。何らかの形で誤った改元情報が広まったのかもしれない」と話した。

一方、今月に入って、同NPO理事の今井章博さん(63)=同市=が福岡県宗像市で、市内の寺に関する「天政」と書かれた文書を発見した。高知県と県境を接する徳島県三好市で同様に「天政」が見つかったことはあったが、四国以外では初めてとみられ、今井さんは「全力で解明したい」と話している。

高知県安田町の「神峯神社」にある石灯籠に刻まれた「天晴」=14日、同町高知県安田町の「神峯神社」にある石灯籠に刻まれた「天晴」=14日、同町

高知市の「森神社」にあるちょうず鉢に刻まれている謎の元号「天政」。近所の主婦(60)は「近所の人たちと毎月神社を掃除しているが、天政のことは全く知らなかった」と驚いた様子で話した=14日、同市高知市の「森神社」にあるちょうず鉢に刻まれている謎の元号「天政」。近所の主婦(60)は「近所の人たちと毎月神社を掃除しているが、天政のことは全く知らなかった」と驚いた様子で話した=14日、同市

高知県田野町の「大山祗神社」にあるちょうず鉢に刻まれた「天星」=14日、同町高知県田野町の「大山祗神社」にあるちょうず鉢に刻まれた「天星」=14日、同町

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