巨大衛星網、目立ち過ぎ?=天文観測への影響懸念-「夜空乱される」と学者ら

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米宇宙企業が1万2000基の人工衛星からなる巨大な通信衛星網を計画している。このほど一部が打ち上げられたが、天文台の観測画像に写り込んでおり、天文学者の国際団体や日本の国立天文台が「きれいな夜空」が乱されると懸念を示す事態になっている。

米スペースX社は巨大衛星網「スターリンク」を計画し、5月に第1弾となる60基を打ち上げた。低軌道を周回し、遠隔地でもインターネットに接続できるようになる。

衛星は打ち上げ直後、超新星を観測中だった米ローウェル天文台の望遠鏡の視界を横切った。撮影された画像には、白い光の筋が斜めにいくつも横切っている。

衛星の金属部分や発電用の太陽電池パネルは光を反射しやすい。国立天文台の大石雅寿特任教授は「肉眼で確認できる程度の明るさだが、天文台の望遠鏡では明る過ぎて観測の邪魔になる」と指摘。計画が完了すると、空には200基程度の衛星が常に見えると予想されている。

宇宙からの微弱な電波を捉える電波望遠鏡にも影響が予想される。地上との通信用に衛星が発する電波は、遮る物がない上空では広範囲に届く。スターリンクが使う周波数は、星が生まれる様子の観測などに影響する恐れがあるという。

世界の天文学者らで構成する国際天文学連合は6月、こうした衛星群への懸念を表明。米国の天文学者はスペースX社と連絡を取り、衛星の素材を反射しにくいものに変え、太陽電池パネルの角度を調節するなどの対策を協議しているという。国立天文台も7月に声明を出した。

大石さんは「通信状況で困っている人には非常に有用。やめなさいとは言えない」と話しつつ、「共通財産である夜空に、ぴかぴか光る物があっていいのか」と訴えた。

国立天文台は4月、観測環境の保護のため「周波数資源保護室」を設立。関係機関との調整を進める。室長を務める大石さんは「きれいな空の環境を維持できるよう努力したい」と話した。

米アリゾナ州の天文台が望遠鏡で撮影した画像。スターリンク衛星の軌跡が何本もの白い斜線として写っている=5月25日撮影(Victoria Girgis・ローウェル天文台提供・時事)米アリゾナ州の天文台が望遠鏡で撮影した画像。スターリンク衛星の軌跡が何本もの白い斜線として写っている=5月25日撮影(Victoria Girgis・ローウェル天文台提供・時事)

国立天文台の周波数資源保護室長を務める大石雅寿特任教授=9日午後、東京都三鷹市国立天文台の周波数資源保護室長を務める大石雅寿特任教授=9日午後、東京都三鷹市

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