防衛装備品、強まる米依存=イージス参画見送り-企画「矛と盾」(4)

政治・外交

安倍政権が防衛装備移転三原則を閣議決定し、武器輸出に道を開いてから5年。規制緩和が低迷する国内防衛産業の「カンフル剤」になることが期待されたが、完成品の輸出案件はいまだゼロ。防衛省関係者は「失敗だった」とため息を漏らす。

一方、武器輸出拡大を掲げるトランプ政権の攻勢もあり、米国との政府間取引である有償軍事援助(FMS)による調達は急増。日本の陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」向けのレーダーに日本企業が参画する計画も実現せず、古い産業構造から抜け出せない防衛産業は瀬戸際に立たされている。

◇「難し過ぎる」と断念

防衛省は昨年、イージス・アショアの搭載レーダーに米防衛大手ロッキード・マーチン製「LMSSR」を選定した。同レーダーに欠かせない「窒化ガリウム素子」を富士通が提供する予定で、日米防衛協力の新たな一例とみられていた。

防衛省関係者は、米海軍が新型イージス艦への導入を決めている米防衛大手レイセオン製レーダー「SPY6」ではなく、LMSSRを選んだ理由について「コストや性能など全ての数値で優れていた」と明かす。富士通の参画が国内産業育成に寄与するという考えもあった。

ところがその後、富士通の不参加が決まった。富士通は試験用などとして少量の素子を製造していただけで、レーダーに提供するには製造ラインを大幅に拡大する必要があった。内部事情を知る関係者は「そのための投資に二の足を踏み、参画を断念した」と話す。

米政府は当初、イージス・アショア用レーダーについて、部品の8割は日本製品を使うことを容認していた。複数の日本企業が参加を検討したが、いずれも「難し過ぎる」などの理由で見送ったと同関係者は語る。

◇スピード重視

中国が国家を挙げて次世代通信規格5Gや人工知能、極超音速兵器など最先端技術に投資する中、米空軍は今年3月、ベンチャー企業や中小企業約60社を招待し、新たなイベントを開催した。米軍の幹部や調達担当者に製品のアイデアなどを直接プレゼンし、採用されればその場で契約金が払われる仕組みだ。

契約手続きを簡略化し、技術革新につながるアイデアを吸い上げる狙いがある。米軍は「大国間競争の時代で競争力を磨くには、独創的手法や技術革新、そしてスピード感が重要」(当時のウィルソン空軍長官)とみている。

特に中国が開発で先行する極超音速兵器は既存のミサイル防衛網では迎撃できず、全く新しい対策を迫られる。レイセオン社幹部は「一企業が解決できる問題ではなく、防衛産業が一丸となって革新的アイデアを生み出さなければならない」と訴える。

◇坂道の車

日本の防衛産業に米国のようなスピード感はない。官主導の「護送船団方式」が定着し、三菱重工業は戦闘機、川崎重工は輸送機などとすみ分けが確立。「それほど利益は上がらないが、食いっぱぐれもないという『ぬるま湯』状態」(防衛企業関係者)が続いてきた。輸出に道が開けても、「あえてリスクを取って海外に出たくないという企業がほとんどだ」と関係者は語る。

最新鋭ステルス戦闘機F35など大型の装備品は米国依存が強まる。2019年度防衛予算におけるFMS調達額は7013億円で、10年度の12倍に膨張。武器輸出拡大を掲げ、大統領自らトップセールスを展開するトランプ政権がその傾向に拍車を掛ける。

カーネギー国際平和財団のジェームズ・ショフ上級研究員は武器輸出の緩和について、「坂道に止まっていた防衛産業という車のサイドブレーキを緩めた行為だった」と指摘。「アクセルを踏まなければ、ずるずると坂道を下がっていく。防衛省からの発注が減る中、防衛産業はまさにそんな状況だ」と語る。

16年公表の防衛装備・技術政策に関する有識者会議の報告書は、防衛産業を「日本の防衛力を根底から支える重要な基盤」と位置付け、「脆弱化は安保上の懸念」と警告した。防衛産業の先細り感が強まり、撤退する企業も出始める中、防衛省関係者は「本気で業界再編を主導し、装備品輸出を支援する体制を整える必要がある」と危機感を募らせている。

インタビューに応じるカーネギー国際平和財団のジェームズ・ショフ上級研究員=4月、米ワシントンインタビューに応じるカーネギー国際平和財団のジェームズ・ショフ上級研究員=4月、米ワシントン

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