魚の大量取引、自由化へ=既存業者からは賛否の声―豊洲市場

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街の鮮魚店などへの供給を担う仲卸業者や、一部の大手スーパーといった専門業者だけに認められていた卸売市場での大口買い付け取引が、豊洲市場(東京都江東区)で来年6月以降、自由化される見通しだ。減少が続く取引量の回復を狙って、市場を監督、管理する国と都が打ち出した打開策の一つだが、規制緩和を歓迎する声が上がる一方、市場内部からは取引の混乱や「目利き」など品定め技術のレベル低下を懸念する声も上がっている。

全国の産地から卸会社が集荷した大量の水産物が夜中から並ぶ同市場の卸売場。最初に魚を買うことができるのは、原則として仲卸のほか資格を持つ大手スーパーやすしチェーン店など、都が認めた専門業者に限定されている。ただし、売れ残りや販売時間より大幅に遅れて到着した品物などに限っては、特例措置として「第三者」と呼ばれる専門業者以外への販売が認められている。

当初は例外的だったこの第三者への販売だが、近年は仲卸の減少や鮮魚小売店の販売不振などで徐々に慣行化し、「今や取引先として欠かせない存在」(卸会社)という。こうした状況を受けて都は、専門業者に限定した取引の規制を撤廃し、特例扱いだった第三者のほか、販売時間の最初から幅広い相手に販売できるよう取引ルールの見直しを予定している。

販売量の低迷に悩む卸会社にとってこの規制緩和は、反転攻勢を掛ける絶好のチャンスだという。好調な業績が続く回転すし業界向けなど「これまで市場外業者に流れてしまった分を取り戻したい」と卸会社のある幹部は意気込む。仲卸を介して市場の魚を調達していた業者も「卸売場から直接買えるようになれば流通コストが削減できる」(都内の中堅スーパー)と期待する。

これに対し、旧築地市場(中央区)時代から取引を支えてきた仲卸は、自由化の動きに反発が根強い。ある老舗仲卸は「魚の見極めはプロでも難しく、質の悪いものを高く買わされる業者が出れば結果として消費者が損をする」と話す。仲卸の機転で、誤って混入した食用に適さない魚が取り除かれるケースなども少なくないため「不慣れな業者が増えれば安全性のチェック機能も退化してしまう」(別の仲卸)と、市場全体の信用力低下を心配する。

初競りで1匹3億円超の高値が注目されたマグロなど、専門性が高い競り取引は今回のルール改正の対象にならないが、アジやイワシといった競り以外で取引される大衆魚のほとんどは自由化される見通し。市場外の食品関係者などの関心は高まっているが「資金力のある企業の買い占めや、近隣国への流出も考えられる」(仲卸)といった懸念も出ている。都や市場関係者は今後、公正な取引を確保した上での新たなルールづくりを進めるという。

長年培ってきた目利き力で、仕入れたマアジの良し悪しを確認する仲卸業者=東京都江東区の豊洲市場長年培ってきた目利き力で、仕入れたマアジの良し悪しを確認する仲卸業者=東京都江東区の豊洲市場

来年6月以降、買い付け業者の参入が自由化される大量の水産物が並ぶ卸売場=29日午前、東京都江東区の豊洲市場来年6月以降、買い付け業者の参入が自由化される大量の水産物が並ぶ卸売場=29日午前、東京都江東区の豊洲市場

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