避難解除も居住なお3割=「生活基盤、別の場所で」―原発事故から9年・福島

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東日本大震災による東京電力福島第1原発事故から間もなく9年。国が指定した福島県内の避難指示区域の範囲は、順次解除が進み、徐々に狭まりつつある。しかし、解除された市町村の居住率は、なお28%にとどまっている。解除のめどが立たない地域もあり、戻らないことを決めた住民は多い。国の支援が見込める復興期間は2030年まで延長されたが、住民や行政関係者は不安を募らせる。

「本当、不便ですよ」。17年3月末に一部の避難指示が解除された浪江町で、災害公営住宅に住む女性(78)は肩を落とす。町内の医療機関は診療所のみ。昨年7月に開店したスーパーも品ぞろえが悪く、週に1度、隣の市まで夫と車で買い物に出る。女性は「9年もたつと町外で家を建てた人が多く、子どもが少ないのも当たり前だと思う」と諦め顔で話した。

避難指示が出された11市町村の今年1月末時点の居住率(住民登録者数に占める現居住者の割合)を見ると、全域が対象となった浪江町が8.6%と最低で、次が富岡町の13.2%だった。最高は指示が一部のみだった田村市の84.5%。

復興庁などが18年度に実施した住民意向調査によると、全域に避難指示が出された双葉、富岡、浪江各町では「戻らない」と答えた世帯が5~6割に上り、富岡町では「既に生活基盤ができているから」と答えた世帯が60.4%に達した。

各市町村では、生活環境を整え人を呼び込もうとさまざまな動きが広がっている。医療施設や商業施設の整備が進むほか、新たな産業基盤構築を目指し、ロボット研究開発拠点の全面運用や水素製造拠点の操業などが年内にも始まる。

3月上旬には、双葉、大熊、富岡各町で最も放射線量が高かった帰還困難区域の一部が解除され、14日にはJR常磐線の全線再開が控える。ただ、全域の解除のめどは立っていない。

ある町の幹部は「住民は、生まれ育った所に愛着がある一方で、『戻るのは無理だ』とも思っており、気持ちは半々」と指摘。「解除してからでないと動けない部分もあり、全域解除がスタートラインだ」と話した。

東京電力福島第1原発が立地する福島県大熊町の災害公営住宅。避難指示が解除され、帰還した住民らが暮らす=2019年9月11日東京電力福島第1原発が立地する福島県大熊町の災害公営住宅。避難指示が解除され、帰還した住民らが暮らす=2019年9月11日

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