復興の姿を世界に=福島産水素、聖火ともす―浪江町に製造拠点

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東日本大震災からの「復興五輪」を理念に掲げる今夏の東京五輪・パラリンピックでは、水素が大会史上初めて聖火台や聖火リレートーチの燃料に使用される。水素の製造拠点の一つとなるのは震災の被災地、福島県浪江町にある大規模研究施設。福島産水素の活用を通じ、復興に進む町の姿を国内外にアピールするとともに、地球環境への配慮を示す狙いだ。

浪江町の研究施設は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や東芝エネルギーシステムズなどが整備。太陽光発電による電力で水を分解して水素を生成するのが特徴で、地球温暖化につながる二酸化炭素(CO2)は一切排出しない。燃料電池車(FCV)約560台分の水素を1日で製造できる世界最大級の生産能力を誇る。

聖火の燃料にはこれまで、プロパンガスなどが使われてきた。水素による炎は通常、無色透明だが、聖火などに使うときには添加剤で着色する予定。聖火台などだけでなく、選手村の宿泊棟や休憩施設、大会関係者が乗るFCVにも福島産水素が使用される方向だ。

水素は貯蔵と運搬が可能で、浪江町で製造された後、ボンベに貯蔵してトレーラーで運ばれる。3月から製造や長距離輸送の試験を開始。7月には水素を使った電力供給システムの構築に向けた実証実験も本格化する予定で、NEDOの大平英二統括研究員は「低炭素社会の実現に、水素エネルギーは中核的な役割を果たす」と強調する。

五輪開催地である東京都は、大会後も被災地の復興の後押しと温室効果ガス削減に向けた取り組みを継続する方針。2050年までに都内のCO2排出量を実質ゼロにする目標を掲げており、浪江町で製造される水素の活用を続ける考えだ。

研究施設がある同町棚塩は、かつて原子力発電所の建設が計画されていた地域で、東京電力福島第1原発事故を契機に東北電力が白紙撤回した。大会で水素が使用されることについて、町産業振興課の担当者は「新たなエネルギーに転換する象徴の地として、町を知ってもらうきっかけになってほしい」と期待を寄せる。

福島県浪江町の水素研究施設(東芝エネルギーシステムズ提供)福島県浪江町の水素研究施設(東芝エネルギーシステムズ提供)

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