防災移転、進む跡地活用=観光拠点やトマト農園に―東日本大震災9年

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東日本大震災で津波被害を受けた岩手、宮城、福島3県の自治体では、防災集団移転促進事業で住民が移転した跡地の活用を進めている。時事通信が昨年12月に実施したアンケート調査によると、活用方法が決まっている土地は全体の73%に上った。災害危険区域に指定され人は住めなくなったが、ヒツジのいる交流の場やトマト農園など、地域の目指す将来像に向けた模索が続く。

調査は、事業を導入した26自治体に実施。自治体が買い取った土地約2012.6ヘクタールのうち、73%の1465.9ヘクタールが「利用済み、利用予定」、残りが「利用未定・検討中」だった。主な用途は産業用地や公園、防災林など。面積の内訳を算出していない宮城県山元町は集計から除いた。

◇ヒツジ村でにぎわう

観光客や住民の交流拠点となっているのが、宮城県岩沼市の「いわぬまひつじ村」だ。震災前は農家があった約3ヘクタールの土地に、ヒツジ29頭がいる牧場やドッグランなどがある。

2015年に除草目的で飼育したのがきっかけで、移転した元住民も整備に携わりながらヒツジと触れ合える牧場へと姿を変えた。週末は餌やり体験に訪れる家族でにぎわい、18年度は約3万人が来場した。

市が事業委託する青年海外協力協会の松尾洋子さん(41)は「悲しい記憶のある場所だが、人と人をつなぐ場にしたかった」と話す。元住民の小林喜美雄さん(72)もボランティアとして関わる一人。「このまま荒れていくよりは活用した方が良い」と理解を示す。人が住めなくなった土地の活性化の難しさを指摘し、「もっと人を呼び込めるような工夫が必要」と語った。

◇太陽発電や農園も

福島県南相馬市は震災後、30年度までに市内の消費電力相当分をすべて再生可能エネルギーで生み出すことを目指し、津波被災地などを風力や太陽光発電の拠点として位置付けた。

鹿島、原町両地区にある計約150ヘクタールの太陽光発電エリアは、18年に運転を始め、年間発電量は一般家庭約3万2000世帯の年間消費量に相当する。市の担当者は「跡地を活用することで発電に必要な面積を確保できた」と説明。市によると、他の太陽光発電所と合わせ、20年度中に市内消費電力の約80%に達する見込みだ。

岩手県大船渡市は、被災した26地区のうち12地区で、住民と土地利用計画を検討。末崎町の1地区は産業用地とすることを決め、「いわて銀河農園」が約3.2ヘクタールの土地に24時間体制で温度や湿度を管理できるトマトの栽培施設を整備した。19年6月から栽培を始め、最盛期には月50トンを生産し、首都圏の大型スーパーなどに卸している。

災害危険区域での事業はリスクが高いが、橋本幸之輔社長(39)は「そのまま死んでいく土地を見ているよりは、自分たちのノウハウを活用できるのではないか」と立地を決断した。

約40人のパート従業員は大船渡、陸前高田両市の住民で、地元の雇用の場としての役割も担う。市の担当者は「地域経済の活性化につながれば」と期待を寄せている。

防災集団移転跡地にある「いわぬまひつじ村」でヒツジに餌を与える子ども=1月19日、宮城県岩沼市防災集団移転跡地にある「いわぬまひつじ村」でヒツジに餌を与える子ども=1月19日、宮城県岩沼市

防災集団移転跡地に整備された太陽光発電所=1月30日、福島県南相馬市防災集団移転跡地に整備された太陽光発電所=1月30日、福島県南相馬市

防災集団移転跡地にあるトマト栽培施設で作業する従業員=1月21日、岩手県大船渡市防災集団移転跡地にあるトマト栽培施設で作業する従業員=1月21日、岩手県大船渡市

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