福島は「汚染の地」?=海外ドラマに偏見描写―東日本大震災9年

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東日本大震災による東京電力福島第1原発事故は、世界各国に大きな衝撃を与えた。事故から間もなく9年を迎える中、海外の映画やドラマで福島を「汚染の地」として描く作品が目立つようになった。偏見に満ちた表現もあり、製作会社などが字幕や音声を修正したケースもある。

「フクシマ? 放射線が漏れて、死の灰が降った所か」。航空機内で行き先を告げられた男性が、驚いた表情を見せる。2015年に始まった米ドラマシリーズ「ZOO」の一場面だ。

ドラマは、世界各地で動物が人間を襲う事件が発生する中、調査チームが真相を究明するという内容。福島沖の島が舞台の回では、放射線によりコウモリが高い高度で飛んだり、馬が凶暴化したりする様子が描かれた。

しかし、日本版DVDでは「フクシマ」との発言部分が無音となり、字幕からも消えた。発売元は「ナーバスな問題なため、音声などをカットした」と説明する。

同様の配慮は、13年放送開始の米ドラマシリーズ「ブラックリスト」でも見られる。国際的犯罪者が免責と引き換えに、米連邦捜査局(FBI)に捜査協力するというストーリーで、ある回では、東日本大震災の救援活動「トモダチ作戦」で被ばくしたという元米兵が登場。作戦後に生まれた子どもに障害があったことから、復讐(ふくしゅう)のためテロリストに転じる内容だ。

だが公開から約1カ月後、福島に関するシーンが修正され、「西アフリカの原発事故で被ばく」という架空の設定となった。製作したソニー・ピクチャーズの日本法人は「社内から『被災者への配慮が足りない』との指摘があった」と理由を語る。

国際結婚を描いた14年のフランス映画「最高の花婿」では、黒人との結婚について「Pour tes parents c’est Fukushima(両親にとってはフクシマだ)」というせりふが出てくる。悲惨な状況を示す文脈だが、字幕では「両親を助けないと」と翻訳された。

字幕などの改変について、海外映画を手掛ける映像翻訳家は「視聴者が不快に感じる可能性があり、修正してもストーリーは伝わると判断したのだろう」と話す。ただ知的財産が専門の上野達弘早稲田大教授(48)は「著作者の同意がない場合は、同一性保持権の侵害に当たる可能性がある」と指摘する。

風評問題に詳しいウィリアム・マクマイケル福島大講師(37)は「海外では、福島は『汚染の地』というイメージが固定化されている。科学的根拠に基づく情報を地道に発信するしかない」と語った。

2015年放送開始の米ドラマシリーズ「ZOO」のDVD2015年放送開始の米ドラマシリーズ「ZOO」のDVD

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