訴訟長期化、疲弊する原告=集団ADRも機能せず―福島

社会

東京電力福島第1原発事故をめぐっては、避難者らが相次いで東電を提訴したが、甚大な被害の立証に時間がかかり、訴訟が長期化している。東電は早期解決を図るため、裁判外紛争解決手続き(ADR)での和解案尊重を掲げる一方で、各地の集団ADRでの和解案を拒否。震災から9年を経ても先の見えない現状に、多くの原告は疲弊している。

2016年4月に福島地裁に提訴した福島県の「中通り」住民54人による訴訟では、長期化を避けるため原告側が東電に和解を働き掛けた。地裁は19年12月に和解勧告したが、東電が和解案を拒否。今年2月に損害賠償を命じる判決が言い渡されると、仙台高裁に控訴した。

原告の植木律子さん(73)は「東電の身勝手な姿勢には失望した」と憤る。都内で教員をしていたが、定年後のついの住み家として、07年に夫婦で福島市に移住。家庭菜園を楽しむ日々だったが、原発事故後は庭の除染を余儀なくされ、放射線への不安にさいなまれた。「常に訴訟のことを考え、悲しみや苦しみを全て訴えた。これ以上できることはない」と途方に暮れる。

福島県浪江町の約1万5000人が13年に申し立てた集団ADRは、「中間指針を上回る一律の賠償には応じられない」として東電が和解案を6度拒否した末、18年4月に打ち切られた。この間には864人が亡くなったといい、その後の訴訟に参加した町民は約630人にとどまる。

浪江町は東電が和解案に応じやすい個別ADRへの移行も勧めるが、希望者は約1000人のみ。町賠償支援係の担当者は「先の見えない避難生活にADR打ち切りが重なり、町民は心身共に疲れ切っている。東電は被害救済のため集団ADRに応じるべきだった」と話した。

東電が集団ADRを拒否する姿勢は18年から顕著になり、同年末までに計24件が打ち切りとなった。19年1月には県内の6弁護団が中間指針の見直しや東電への指導を求め、政府の原子力損害賠償紛争審査会に申し入れた。

福島地裁の判決後、記者会見する福島県の「中通り」住民訴訟の原告ら=2月19日、福島市福島地裁の判決後、記者会見する福島県の「中通り」住民訴訟の原告ら=2月19日、福島市

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