最先端ITで農業再興=担い手不足緩和へ―国も「全国モデル」に期待・福島

政治・外交

福島県は、東京電力福島第1原発事故で担い手が急減した「旧避難指示区域」の農業再興に向け、企業や大学と連携し、IT機器を使って省力化できる最先端の農作業の手法を全国に先駆けて研究・開発している。一部の畜産農家が離れた場所から牛の健康状態を確認しているほか、自動運転で無人走行するトラクターも登場。高齢化から農家の担い手不足は全国的な課題で、国も県の取り組みが人材難の解決に向けた全国のモデルになると期待している。

「便利だ。特に発情や分娩(ぶんべん)の時は省力化できる」。福島県飯舘村で和牛を繁殖している村議会議員の佐藤一郎さん(58)はこう語る。村は原発事故後、放射線量が高いとして、全域を対象に国から避難指示が出され、2017年3月に一部を除き解除された。佐藤さんは18年6月に牛の繁殖を再開し、実証実験のため県から提供されたIT機器を牛舎に導入した。

牛舎には牛の体温を測るサーモグラフィーや監視カメラなどを設置し、牛の首には行動量を調べるセンサーを装着。これらのIT機器が読み取る画像・文字データは福島県が開発したシステムで一元的に管理される。佐藤さんはタブレット端末やスマートフォンなどでデータを閲覧し、牛の体調に異変がないかを確認している。

牛の行動量の変化から分娩が近いと分かれば、佐藤さんに通知が届く。これまでは実際に牛舎に足を運んで牛の状態を確認していたが、村議の活動などで行けないこともあった。しかし、分娩の予兆を察知できれば、牛舎近くに住む家族に助言できる。佐藤さんは「データを保存しておけるため、畜産農家を育てる際も『この時はこうだった』と伝えやすい」と利点を強調する。

自動運転で無人走行するトラクターは全地球測位システム(GPS)で現在の位置を把握し、土壌を耕したり、肥料や種をまいたりしてくれる。作業効率は従来に比べ2~4割高まり、耕作面積の拡大や作業時間の短縮につながる。

県は高解像度の衛星画像を活用し、水稲の生育状況や病害虫の発生状況、食味などを判断する技術も開発し、実証試験を重ねている。生育状況を色分けして表示し、蓄積したデータを基に発症リスクも示す。

生育中のブロッコリーが収穫期を迎えたかどうかを人工知能(AI)で判断するロボットも開発した。ロボットが畑を移動しながら、画像処理技術で即座に選別。育ったブロッコリーは自動で収穫してくれる。

農林水産省は、福島県の取り組みについて「ITやAIを活用し、人手不足という課題に全国に先んじて対応している」(農林水産技術会議事務局)と評価している。

牛の行動量などのデータを一元的に管理するシステムで牛の体調を確認する佐藤一郎さん=2月18日、福島県飯舘村牛の行動量などのデータを一元的に管理するシステムで牛の体調を確認する佐藤一郎さん=2月18日、福島県飯舘村

監視カメラを使い、牛舎の様子を確認できるタブレット端末=2月18日、福島県飯舘村監視カメラを使い、牛舎の様子を確認できるタブレット端末=2月18日、福島県飯舘村

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