檀家訪ねて40万キロ=震災で離散、住職が東奔西走―福島・東日本大震災9年

社会

東日本大震災と東京電力福島第1原発事故により、福島県では今なお約4万人が県内外で避難生活を送る。県内の寺院では、檀家(だんか)が全国に離散したことで、住職が檀家回りに東奔西走。車の走行距離は、震災後の9年間で40万キロにも及んでいる。

「震災前は寺から10キロ圏内にほとんどの檀家がいたが、今は全国に点在している」。第1原発が立地する大熊町の遍照寺住職、半谷隆信さん(68)は語る。原発事故により全町民約1万1500人が避難を強いられ、同寺の檀家約600軒は、宮城県から大分県まで散り散りになった。

寺がある地区は、原則立ち入り禁止の「帰還困難区域」に指定されているため、半谷さんは近隣の広野町に新たに設けた別院から訪問。葬式や法事で遠出することも多く、「9年間で40万キロほど車を走らせた」。転居に伴い墓を移したり、仏壇を供養したりする動きもあり、「震災前に比べて仕事量自体が増えている」と指摘する。

2017年に一部地域で避難指示が解除された浪江町の長安寺住職、横山周豊さん(79)は「震災で寺を取り巻く環境が一変した。どこに避難したのか分からない檀家も多い」と頭を悩ます。約500軒のうち町内に残るのは数軒で、約3割が県外で生活を送る。「避難に伴い離檀した人もおり、寺を運営する上では厳しい」と語る。

事故に伴い、寺も移転を余儀なくされた。福島市周辺に避難した檀家が多いことから、14年に同市内に別院を建築。これまで車で年間3万~4万キロ走ってきたが、高齢のため今後は運転手を付けることも検討しているという。横山さんは「浪江町から離れても法要などで長安寺を頼ってくれる人も多い。遠くてもできる限り訪ねたい」と話した。

大熊町から避難した檀家(だんか)の遺骨を墓に納める「納骨式」で、経を唱える遍照寺の半谷隆信住職(右)=2月15日、福島県郡山市大熊町から避難した檀家(だんか)の遺骨を墓に納める「納骨式」で、経を唱える遍照寺の半谷隆信住職(右)=2月15日、福島県郡山市

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