東北の蔵、若手奮闘=「震災前超える日本酒を」―被災3県

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岩手、宮城、福島3県には酒造会社が計110社ある。東日本大震災でその多くが被害を受けながら、1社も閉業せず日本酒を造り続けている。震災直後には応援購入の動きもあったが、国内販売量は減少傾向が続く。一方で9年がたつ中、若手が増え、新たな息吹も生まれている。

岩手県の赤武酒造は被災後、沿岸部の大槌町から盛岡市へ移転を余儀なくされた。採用し直した社員8人は20~30代の酒造り未経験者で、女性が半数を占める。杜氏(とうじ)の古舘龍之介さん(27)は「最初は自分一人で休みなく造っていたが失敗も多かった。働きやすい環境があってこそ、手を抜かない酒造りができると気付いた」と振り返る。

かつて蔵は女人禁制とされ、仕込み期間は昼も夜もない作業が続いた。しかし、同社は手作業と機械を組み合わせるなどし、定時の出退社や毎月8~9日の休日確保を実現。高い技術が求められる純米大吟醸酒造りにも挑み、県の新酒鑑評会などで高い評価を得てきた。古舘さんは「特に同年代の人たちに、熱い思いがこもったおいしいお酒を楽しんでほしい」と力を込める。

宮城県気仙沼市の男山本店で営業を担当する菅原大樹さん(28)は、震災を機に家業を継ぐと決意。大学卒業後、大手チェーンの飲食店に2年間勤めた後、海外営業を見据えニューヨークとパリに計1年間、語学留学した。今では毎月欧米やアジアを飛び回り、スペインやベトナム、ニュージーランドなどに販路を広げている。

英語での蔵見学も受け付け、「ここ1、2年で外国人も訪れるようになった」と期待を寄せる。津波で被災した販売店が今春に再建される予定で、自社商品以外の販売や立ち飲みスペースなども構想。菅原さんは「震災前と同じことをしていては駄目。地元や時代の変化に合わせ、より良い酒造りを続けていきたい」と語った。

福島県白河市の有賀醸造の杜氏、有賀裕二郎さん(35)は震災後、大学院を中退し家業の酒造りに飛び込んだ。福島第1原発事故の影響で農産物が売れない状況に発奮。県産酒米を使い開発した地元の野菜に合う大吟醸酒は、上品な甘みが特長だ。実験と分析の経験を生かし、こうじや酵母の組み合わせを何通りも試しながら理想の酒を目指す有賀さん。「実験室のように蔵にこもり、試行錯誤する日々。最近ようやくイメージ通り造れるようになってきた」と笑った。

日本酒製造の指導、助言を行う福島県ハイテクプラザ会津若松技術支援センターの鈴木賢二副所長(58)は「酒の魅力は造り手の魅力。東北には今、こんなに個性的な酒と蔵があると知ってほしい」と話している。

酒造りへの意気込みを語る赤武酒造の古舘龍之介さん=2月20日、盛岡市酒造りへの意気込みを語る赤武酒造の古舘龍之介さん=2月20日、盛岡市

東日本大震災の津波で流された販売店舗の写真を示す男山本店の菅原大樹さん=2月21日、宮城県気仙沼市東日本大震災の津波で流された販売店舗の写真を示す男山本店の菅原大樹さん=2月21日、宮城県気仙沼市

新たに開発した純米酒を手に笑顔を見せる有賀醸造の有賀裕二郎さん=2月18日、福島県白河市新たに開発した純米酒を手に笑顔を見せる有賀醸造の有賀裕二郎さん=2月18日、福島県白河市

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