自治体・医療界から発令圧力=「経路不明」感染者数がカギ―緊急宣言、慎重に見極め

政治・外交

新型コロナウイルスの国内感染が広がる中、安倍晋三首相が緊急事態宣言を発令するかどうかが焦点だ。感染症専門家や地方自治体からは実施を求める声が強まっているが、発令した場合に経済に与える影響は計り知れず、首相は判断を保留。感染者の推移を注視しつつ、可否を慎重に判断する方針だ。

改正新型インフルエンザ対策特別措置法は、(1)国民の生命・健康に著しく重大な被害を与える恐れ(2)全国的かつ急速なまん延により国民生活・経済に甚大な影響を及ぼす恐れ―の二つの条件がそろった場合に、首相が専門家の意見も踏まえて緊急事態を宣言すると定めている。

政府はこのうち第1条件は、すでに満たしているとの立場だ。残る第2条件に関し、特措法を所管する西村康稔経済再生担当相は29日の民放番組で「リンク(感染経路)が追えない感染者数が爆発的に増えたタイミングで、緊急事態宣言ということになる」との考えを示した。

感染経路の分からない患者数は今、東京都などで増加傾向にあり、医療崩壊への懸念が高まっている。政府に対策を助言する有識者会議メンバーは30日に非公式に行った電話協議で「緊急事態宣言が必要」との認識で一致。オーバーシュート(爆発的感染増加)を未然に防ぐため「首都圏封鎖」を主張する専門家もいる。

首相は31日、東京都の小池百合子知事を首相官邸に招き、感染状況について報告を受けた。都内では同日、新たに78人の感染が判明。小池氏は首相との会談後、記者団に「国家としての判断が今、求められている」と危機感を隠さなかった。

ただ、政権内には、東京の人口を勘案すれば、感染者数は危機的水準ではないとの見方がある。政権幹部は「経済への影響が大き過ぎる」とも指摘、緊急事態宣言に慎重な立場を示した。

関係者によると、首相官邸は鉄道や高速道路を遮断した場合のシミュレーションに着手。東京、埼玉、千葉、神奈川の4都県を1カ月封鎖すると実質GDP(国内総生産)が約9兆円減少するとの民間試算もあり、政権幹部は「今の状況で宣言を出すことは絶対にない。首相も菅義偉官房長官も反対だ」と明言した。

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