揺らぐ1強、力学変化=コロナで混迷、安倍政権

政治・外交

安倍晋三首相が新型コロナウイルス対応に苦戦し、政府の危機対応は混迷を深めている。感染を封じ込める医療対応や、国民生活を守る経済対策は後手に回り、出口は見えないまま。「安倍1強」体制は揺れ、政権内の力学変化もささやかれる。

「長期戦も予想される中でウイルスとの闘いを乗り切るためには、何よりも国民との一体感が大切だ」。首相は17日の記者会見で、外出自粛など国民の協力を訴えた。同時に、首相官邸が主導した目玉政策の「収入減少世帯への30万円給付」が、公明党の反対によって「国民1人10万円給付」に急きょ変わった「混乱」を認めて陳謝した。

首相は2012年の政権復帰以来、国政選挙で勝利を重ねて1強体制を築き、危機管理や国会対応に臨んできた。だが、コロナ問題では十分な手を打てていないとの厳しい見方が広がる。医療従事者への高性能マスクなどが不足し、経済対策もスピード感に欠けるためだ。

背景には、危機対応の要だった菅義偉官房長官が重要政策決定から「外されている」(自民党閣僚経験者)ことや、政府・与党の連携が十分機能していないことがあるとみられる。

これまでは菅長官が公明党の支持母体である創価学会幹部とのパイプを生かし、同党との調整役を担ってきた。公明党関係者は現金給付をめぐる迷走に「菅長官と学会幹部のパイプは機能していなかった。首相が周辺とだけで決めた結果だ。第1次政権と同じだ」と断じた。

不評を買う布マスク2枚配布も含め、首相の対応は経済産業省出身の秘書官ら「官邸官僚」が主導。一斉休校など事前に与党への根回しがないケースも目立ち、与党側は不満を強めている。

自民党内には「秘書官が首相日程を絞り、若手議員はなかなか会えない。首相の感覚がどんどんずれていく。役人だけで物事を決めている」(石破派ベテラン)との不満も。閣僚経験者は「首相は菅長官ではなく、官僚の言うことしか聞かなくなっている」と語った。

首相にとって、1年延期となった来年の東京五輪・パラリンピックの成功が至上命令。コロナ禍収束に全力を挙げ、経済対策にまい進することで活路につなげたい考えだ。

しかし、報道各社の世論調査でも内閣支持率は下落傾向にあり、感染収束の先行きが見えない中で、態勢の立て直しは容易ではない。首相の自民党総裁任期は来年9月までだが、同党中堅は「政権末期だ。野党がだらしないことに救われている」と指摘。政府高官は「安倍政権もいよいよ終盤。コロナ収束とともに退陣か衆院解散・総選挙になるだろう」と予想した。

緊急事態宣言の対象を全国に拡大したことを受け、記者会見する安倍晋三首相=17日、首相官邸緊急事態宣言の対象を全国に拡大したことを受け、記者会見する安倍晋三首相=17日、首相官邸

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