商業捕鯨、「自立」へ波高し=新型コロナで消費回復遠く―再開1年

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日本が商業捕鯨を31年ぶりに再開してから7月1日で丸1年。懸念された国際社会からの目立った抗議はなく、漁も「好調」(捕鯨業者)だ。しかし、長らく食卓から遠ざかっていた鯨肉の消費は簡単には戻らない。捕鯨業者は補助金頼みから自立経営への転換を目指すものの、新型コロナウイルスの流行など前途には高波が打ち寄せる。

青森県八戸市の卸売市場では4月中旬から6月中旬にかけ、下北半島沿岸の日帰り操業で捕れたミンククジラが取引された。鯨体調査に時間がかかる調査捕鯨時代とは異なり、捕獲後すぐ解体される鯨肉は新鮮で、刺し身にうってつけ。主要部位の赤肉は当初1キロ3000~4000円の高値が付いた。

ところが6月に入ると、「半値以下」(卸売業者)に急落。豊漁となった上、新型コロナによる外食自粛が響いた。沖合で数カ月にわたり漁をする母船式捕鯨が供給する冷凍鯨肉も、スーパー向けが底堅い一方、外食向けは苦戦している。

飲食店向けに鯨肉のインターネット通販を手掛けるミクロブストジャパン(東京)の志水浩彦社長は「新しい食材として認知され始めたところだったのに、コロナで台無し」と肩を落とす。鯨肉を食べたことがない若者が関心を持たない以上、需要の先細りは必至だ。

それでも、母船式捕鯨を営む共同船舶(東京)の森英司社長は「赤肉の需要は伸びており、遠からず不足する」と強調。商業捕鯨移行に伴い捕獲枠が縮小し、生産量が4割減ったことから、枠の拡大を訴える。燃料費や人件費がかさむ母船式の経営安定に、生産拡大は欠かせない。

政府は今年度、漁場探索や捕鯨技術の開発支援のため、51億円の予算を計上した。「自立できるまでの暫定措置」(水産庁幹部)で、捕鯨業者らは黒字化へコスト削減を急ぐ。ただ、早期の増枠は難しい上、消費拡大の妙案も見当たらない。新型コロナ収束も見通せず、「より大きなクジラを必死で追うのみ」(千葉県の沿岸小型捕鯨業者)と前を向くのが精いっぱいだ。

2019年7月に再開された商業捕鯨。捕獲されたニタリクジラ(共同船舶提供)2019年7月に再開された商業捕鯨。捕獲されたニタリクジラ(共同船舶提供)

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