「爆買い」米兵器を検証=F35、無人偵察機、陸上イージス―ゆがむ防衛力整備

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秋田、山口両県への配備計画撤回に追い込まれた陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」。河野太郎防衛相による聖域なき見直しに、防衛省内では「第二のアショアは何か」との声もささやかれる。安倍政権は最新鋭ステルス戦闘機F35の大量調達を含め、巨額の米国製兵器購入に走った。検証すると、防衛力整備より米国の歓心を買うことに重きを置いたことが透ける。

◇一気に105機、1兆2000億円

「爆買い」の象徴は、2018年に閣議了解されたF35の105機(計約1兆2000億円)追加調達だ。旧民主党政権で決まった42機から一気に3倍超の計147機になり、将来的には航空自衛隊の戦闘機の半分を占める。防衛省によると、30年間の維持費を含めた経費は総額約6兆円を超える見込みだ。

当時、空自内では「運用構想を策定する前に、政治判断で大量取得が決まった」と驚きが広がった。防衛省幹部は「対米貿易黒字の解消に使われた」と声を潜めた。

しわ寄せで、同省が日本主導を掲げ開発を進める次期戦闘機の調達数は、70~90機にとどまる見通しだ。国内の防衛産業からは「技術基盤を維持するには少な過ぎる」とため息が漏れる。空自内では「機種が偏るのは運用上好ましくない。F35の取得数を見直すべきでは」との意見が根強い。

◇「導入中止」押し戻す

「大臣からはしっかり検討しろと指示されている」。武田博史防衛装備庁長官は今月、国会でこう答弁し、米国の大型無人偵察機「グローバルホーク」の調達コスト削減に向けた努力を強調した。

安倍政権が14年に導入を決めた同機も防衛力整備にゆがみを生じさせた。当初の見積もり(3機で約510億円)よりコストが上昇し、現在は約613億円。メーカーの部品も枯渇しており、取得が遅れている。

防衛省は一時、導入中止を検討したが、米に配慮する官邸と外務省に押し戻された。政府筋は「防衛省は中止を念頭に調整したが、日米共同の情報収集や警戒監視、同盟強化を理由に継続案件になった」と話す。

グローバルホークは、17~18年に米国内とスペイン沖で墜落事故も起こした。アショア同様、狭い国土と過密な空域の日本に適しているのかという懸念もある。

◇官邸主導の慢心

アショアは17年に日米首脳会談を経て閣議決定された。陸自幹部は「政治判断で導入が決まり、海自の負担軽減と、陸自もミサイル防衛の正面に出た方がいいという流れになった」と振り返る。価格は2基で約2500億円。将来の維持コストを含めると約4500億円に上る。

異論もあった。北朝鮮は日本を射程に収める弾道ミサイルを数百発、配備している。自衛隊幹部は「飽和攻撃(同時に多数発射)の対処は、護衛艦に占めるイージス艦の割合や、迎撃ミサイルの数を増やした方が効果的」と指摘する。アショア2基で発射できる迎撃ミサイルは計48発。一方、最新型イージス艦は1隻に発射装置が96発分ある。平時は多様な任務にも使える。

本来、武器の調達は防衛力整備計画に基づき、制服組から背広組の内部部局(内局)に要望が上がる。内局が政策的見地から精査し、合理性を判断。財務省で認められないこともある。アショアではこうした手順が飛ばされ、官邸の意向を受けた内局が実務を進めた。「お墨付き」を得た慢心が、配備候補地の選定をめぐるずさんな調査や、迎撃ミサイルの技術的な問題への対応の甘さを招いた可能性もある。

大なたを振るった河野防衛相は、今後の防衛力整備について「日本の財政を考えると防衛予算が飛躍的にこれから伸びるとは考えにくい。優先順位をしっかりと付けた上で、必要なところに必要な手当てをする」と語る。実現には官邸が「買い物」感覚で介入することも断つ必要がある。(時事通信社編集委員・不動尚史)。

米ハワイにある陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の試験試射施設を視察した河野太郎防衛相=1月(防衛省提供)米ハワイにある陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の試験試射施設を視察した河野太郎防衛相=1月(防衛省提供)

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