大阪取引所・山道社長:商品先物、3年で倍に=インタビュー

経済・ビジネス

大阪取引所の山道裕己社長は時事通信社のインタビューに応じ、同じ日本取引所グループ(JPX)傘下の東京商品取引所から貴金属、ゴム、農産物の商品先物市場を移管させ、従来の株式先物などに加えて幅広い上場商品を一体的に扱う「総合取引所」として27日から本格稼働することを踏まえ、商品先物の取引量を「3年で2倍ぐらいにはしたい」と強調した。

商品先物に新規参入する証券会社に関しては、当初は海外勢を含め10社弱との見通しを表明。また、原油やガソリン、電力などのエネルギー市場が残る東商取とは別に、大阪取で原油関連の先物を、早ければ2021年秋の取引システム更改に合わせて上場させる検討を進めていることも明らかにした。

―総合取引所化の意義は。

大阪取で金融デリバティブの取引をしている投資家は世界中にたくさんいるが、日本の商品先物取引にはなかなか入って来られなかった。大阪取と東商取では監督官庁や法律が異なり、規制対応コストが高まることが理由で、商品先物を扱っていなかった証券会社が多かったからだ。

しかし、今後は大阪取では監督官庁が金融庁、法律は金融商品取引法に一本化される上、扱う商品が増え、幅が広がる。金融デリバティブも商品先物も同じ証券会社が一元的に扱い、投資家は同じ口座から注文を出せるようになる。証券会社にとっても投資家にとっても、利便性が飛躍的に高まるのは間違いない。結果として、取引高が改善していくという効果を期待する。

―日本の商品先物取引が低迷した理由は。

20年ぐらい前までは活発だったが、(商先業者の)営業面でトラブルがあったりして、不招請勧誘が禁止されるなど、規制が強化された。投資家が減って流動性が低下し、さらに投資家が減るというネガティブなスパイラルになってしまった。簡単ではないが、今まで商品先物を取引していなかった投資家が入って来て、流動性が上がり、また新しい投資家が来るというポジティブなスパイラルに変えたい。

商品先物市場には、価格のリスクヘッジなどをする実需家、当業者も多い。そういう人たちに活発に取引してもらうよう、流動性のあるマーケットにしていきたい。

―貴金属などの商品先物には、どの程度の証券会社が参入する見通しか。

27日の商品移管日の参入を目指していたが、新型コロナウイルスの影響などで同日には間に合わないかもしれないという企業も含めると、10社弱はある。外資、国内大手、ネット、地場など、いろんなタイプの証券会社があり、今までよりもバラエティーに富んだ投資家を連れて来てもらえるのではないか。

―移管後の商品先物の取引量はどれくらい増えそうか。

利便性が高まり、新しいブローカーが入ることによって、今まで日本市場で取引してこなかった投資家が来る可能性がある。3年で2倍ぐらいにはしたい。

―山道社長が会長を務める東商取は今後、どうあるべきか。

大阪取と一体の法人になるという希望は持っているが、(東商取の)監督官庁(である経済産業、農林水産両省の意向)もあるし、なかなか思うようには物事が運ばないと考えるので、時期は言えない。ただ、法人としては別でも、いろんな会議を一本化するなどし、もう一体経営をしている。JPXグループに入ってもらったことによるはっきりした効果を示したい。

―新商品の計画は。

大阪取の商品数は、東商取から移管される分を合わせても、米国のシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)やインターコンチネンタル取引所(ICE)、シンガポール取引所(SGX)に比べるとまだ少なく、もっと増やしたい。いろいろと情報収集を含め、考えてはいる。来年秋に取引システムを更新するが、マーケットに需要がある商品をタイムリーに上場できるようなシステム構築を心掛けている。

―金融庁の指定により、原油、ガソリン、軽油は大阪取でも扱えるようになった。東商取とは別に商品展開を考えているか。

原油に関する先物の上場を真剣に検討している。(東商取と)同じようなものにしてもしょうがないので、ちょっと特徴のあるものにはなると思う。できれば、来秋のシステム更改に合わせるのが一番いいとは考えているが、間に合うかどうかだ。

―東商取はLNG(液化天然ガス)先物をシステム更改時に上場する方針だったが。

それは継続的に検討する。

―暗号資産(仮想通貨)の先物などの商品化は。

現時点で具体的に計画していることはないが、海外投資家などからの要望は多く、非常に興味を持ってスタディー(研究)している。ただ、先物商品を上場するとなると、投資家保護の視点は欠かせないので、そこに配慮しながら何ができるか考えていかざるを得ない。まだ、いろいろ暗号資産をめぐる不祥事もあり、当面は踏み切りにくい。

―ゴム、農産物には取引がほとんどない商品もあるが、移管後の上場廃止も考えるか。

商品先物に限らず、金融デリバティブでも常にそういうことは考えている。だが、デリバティブはあまり取引がなくても、コストが掛かるわけではない。東商取から移管される商品に関しては、今までの経緯もあるので、(上場廃止するなら)農水省や経産省にも話はしなければいけない。すぐに上場を廃止するということはない。成果が出るまでに時間はかかるかもしれないが、今後はいろんなキャンペーンも実施していきたい。

立ち会いの板で流動性を持たせることが非常に重要なので、金を中心にいくつかの商品で、マーケットメーカーやリクイディティープロバイダーをもっと増やすことを考えている。彼らが出すプライスにぶつけてもらって価格を形成していくということは必要になってくると思う。

デリバティブは「待ち伏せ」。品をそろえ、できなくても置いておくと、急に人気が出ることもある。それがデリバティブのいいところなので、上場廃止には結構、慎重だ。

―コロナ禍で、安全資産とされる金への関心が高まっている中、総合取引所が本格稼働する。

今までの大阪取にはない特性を持った商品が移管されるので、既にいろんなプロモーションをしている。JPXのホームページでは、金に関して初歩的なところから説明している動画を掲載しているし、証券会社や商品先物業者向けにウェブでの研修も実施している。このような啓発活動は継続していく。

個人投資家の金先物取引については、標準よりもミニの方がなじみやすいかもしれない。ミニは、標準の10分の1のサイズと金額だし、差金決済だから、大阪取で日経225やTOPIXの先物を取引してきた人には扱いやすいのではないか。今後はミニのプロモーションも行い、主力の商品に育てたい。(了)

インタビューに答える大阪取引所の山道裕己社長=13日、東京都中央区インタビューに答える大阪取引所の山道裕己社長=13日、東京都中央区

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