拉致解決、糸口見えず=コロナ禍で風化懸念

政治・外交

安倍政権が最重要課題の一つと位置付ける北朝鮮による拉致問題解決の糸口が一向に見えない。もともと停滞していたところに新型コロナウイルスの世界的感染が重なり、外交交渉もままならない。拉致被害者の横田めぐみさんの父、滋さんが亡くなり、他の被害者家族も高齢化が進む中、コロナ禍による風化の懸念もある。

「2002年の5人の拉致被害者の帰国から1人も帰国させることができず大変申し訳ない」。菅義偉官房長官は21日、「北朝鮮による拉致被害者を救出する知事の会」メンバーとの面会で進展のない現状を陳謝。「安倍晋三首相も私も全力で取り組んでいる」と釈明した。

首相は、米朝首脳による18年6月と19年2月の2回の会談で広がった融和ムードを受け、間を置かず金正恩朝鮮労働党委員長に前提条件なしの日朝首脳会談を呼び掛けた。だが、北朝鮮は応じず、今年に入り米国などで新型コロナ感染が急拡大すると各国で外交がストップ。「米国頼み」の交渉も行き詰まりを見せている。

政府高官は「今は日本国内のコロナ対応が優先になってしまう。交渉を進められる状況にない」と話す。一方、政府関係者の一人は「北朝鮮でもコロナ感染がまん延し、苦慮している。助けを求めてくれば拉致問題を動かすチャンスはある」と語るが、現実味は乏しい。

今年2月に拉致被害者の有本恵子さんの母、嘉代子さんが、6月には横田滋さんが相次いで亡くなった。首相は「断腸の思いだ」と表明したが、目立った成果を示せない状況が続く。

拉致被害者を救出する知事の会メンバーは、コロナ禍で集会や映画上映会が開けないとし「(拉致問題が)風化するのではないかという恐怖を持っている」と指摘する。

政府の拉致問題対策本部ホームページなどで公開されたメッセージで、田口八重子さんの長男飯塚耕一郎さんは「北朝鮮から被害者たちが帰ってこない今、拉致事件は現在進行形で続いている。このことを世界中の人々は知るべきだ」と訴えた。

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