敵基地攻撃論に危うさ=柳沢協二・元官房副長官補

政治・外交

―政府が陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」導入を断念した。

どんなに迎撃ミサイルを置いても百発百中とはいかない。ウエポンシステムを置いたから安心だという錯覚に陥るのが一番まずい。隙間をどう防護するかは、兵器でなく政治の役割だ。

―ミサイル防衛に穴があいた。

もともと穴だらけだった。ミサイルを撃たれない状況をつくることを考えていく必要がある。本当に穴があいて大変なら、(ブースター落下制御に必要な改修のため)追加の2000億円をかけることと、他の手段との費用対効果を比べなければならない。そういう発想が全くないのが理解できない。

―政府は「敵基地攻撃能力」の保有を検討している。

(陸上イージスより)はるかに難しく、お金も天文学的にかかる。攻撃目標を把握し、相手の防空網をたたかなければいけない。どのくらいつぶせたか効果の測定も必要だ。不足部分は第2撃をやらなければいけない。迎撃ミサイルに比べ、より相手の反撃を誘発する。政治的なハードルもさることながら、軍事作戦的に難しい。そういう話にすぐ行くところに危うさを感じる。

―専守防衛との整合性は。

専守防衛とは、攻めて来るものはたたくが、こちらが攻め込まないことで、相手に攻撃の口実を与えないことだ。敵基地攻撃能力はそれを超える。対米協力という文脈で、既に専守防衛の理念を超えている。米朝、米中の戦争をどう防ぐか、緊張を下げるために日本に何ができるか考えなければいけない。それをせずに敵基地攻撃能力を求めるのは、政治の本来の役割を忘れた議論でしかない。

―米中間の緊張が高まる中、日本にできる役割とは。

もう少し(米中間の)対話を模索していい。呼び掛けるだけでなく、日本としての仲介の理念が必要だが、誰もそれを考えていない。

―米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設の見直しを求める声もある。

軟弱地盤(の判明)によって工費が3500億円から9300億円になる。ただ、24年かけた経緯があり、今までの政策の惰性も働いている。今の政権では見直しは望めないかもしれない。

柳沢協二氏(やなぎさわ・きょうじ)東大法卒。防衛庁防衛研究所長、官房副長官補を経てNPO国際地政学研究所理事長。73歳。東京都出身。

インタビューに答える柳沢協二・元官房副長官補=7月20日、東京都中央区インタビューに答える柳沢協二・元官房副長官補=7月20日、東京都中央区

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