水泡に帰すアベノミクス=コロナ禍打撃、経済縮小―再生へ構造改革急務

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2012年末に発足した第2次安倍政権は、金融緩和と財政出動、成長戦略の「3本の矢」による経済政策「アベノミクス」を推進してきた。円安による企業業績改善や株高といった成果を挙げたが、公約に掲げたデフレ脱却はいまだ実現できていない。足元では新型コロナウイルスの影響で経済が急激に縮小。看板政策の果実は水泡に帰しつつあり、経済再生には構造改革が急務だ。

民主党(当時)政権下では、歴史的な水準まで円高が進み、日経平均株価は安倍政権発足直前まで1万円割れが続いた。デフレの長期化で閉塞(へいそく)感が強まっていた。

安倍晋三首相は就任直後に「強い経済を取り戻す」と宣言し、アベノミクスを始動させた。13年に日銀は市場で国債を買って大量のマネーを供給する異次元緩和を導入。円高是正で輸出企業の業績は好転し、株価は15年に2万円台を回復した。

しかし、企業は賃上げに慎重な姿勢を崩さなかった。物価変動の影響を除く実質賃金は17年に前年比0.2%減、18年に0.2%増と伸び悩み、19年は0.9%減に沈んだ。家庭に景気回復の実感は乏しく、個人消費も盛り上がっていない。

日銀は2%のインフレ目標を掲げているが、消費税増税の影響を除くと、物価は一度も届いていない。首相は「デフレではない状況をつくり出せた」と述べたが、逆戻りの懸念は消えず、脱却宣言は出ていない。

規制緩和など成長戦略の中身も乏しかった。内閣府によると、日本経済の実力を示す潜在成長率は19年に0.9%と4年連続の横ばいだった。

既に失速していたアベノミクスにコロナが追い打ちを掛けた。20年4~6月期の実質GDP(国内総生産)は年率換算で485兆円と、前期比41兆円も目減りし、政権発足時(12年10~12月期)の498兆円を下回った。生活実感に近い名目GDPは506兆円で、600兆円の政権目標は遠のいた。

借金の山も残された。消費税を5%から2段階で10%に引き上げたが、主要国中最悪の部類に入っていた財政はコロナ対策の巨額支出で一段と悪化。20年度末の国債発行残高は964兆円と実質GDPの2倍に達する見通しだ。安倍政権は「経済再生なくして財政健全化はない」(麻生太郎財務相)として財政再建を後回しにしてきたが、財務省幹部は「いつまでもこの状態を放っておけない」と危機感を示す。

野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「コロナショックを機に、金融・財政政策から経済の効率性を高める構造改革へと一気に比重を移すべきだ」として、サービス業の生産性向上などに取り組むよう求めている。

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