米中対立で「難しいかじ取り」=佐々江賢一郎・前駐米大使
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―新型コロナウイルス感染症が国際秩序に与えた影響は。
一つはガバナンスの問題だ。各国がいかに自らの国をうまく統治できるかという体制競争の時代になった。二つ目は、われわれが経験したことがない景気後退があり得る。そういう意味でクライシス(危機)に向かう可能性のある非常に難しい時期だ。三つ目に国家間の対立、競争が先鋭化した。特に米中対立だ。中国に対する米国内の警戒感が一挙に増大した。
―新型コロナは米国衰退のきっかけになるか。
米国自身がこれをチャレンジと受け止め、国内対立を解消していく方向に動いていくかどうかに懸かっている。
―日本はどうすべきか。
難しいかじ取りを迫られる。米国の同盟国として日本は同盟を強化し、米国を支えながらも米国が国際社会への関与から引くことがないように導く役割がある。一方、中国は難しい相手ではあるが、日本は中国と共存する方法を考えねばならない。
そのためには複眼的な思考が重要だ。日米同盟は最も重要で、陰りが出るようでは対中国、対ロシア、対北朝鮮といった全ての外交関係に波及する。それと同時に、米国と協調するが、必ずしも政策が全て同じということではない。
米中対立が先鋭化する中で、日本が日和見的な態度を取ることは好ましくない。同時に、中国がこの地域、世界秩序にうまく関与していく過程で日本ができることは多いと思う。
―具体的には。
若い人たちの日中交流は重要だ。中国の若者が日本の自由民主主義体制を知ることの意味は大きい。中国は非常に大きな国で、変革には時間がかかる。
ただ、日本は中国内の非民主主義的な事柄については「歓迎していない」「好ましくない」と、よりはっきりと行動で示すべきだ。
―政府内で敵基地攻撃能力の議論が始まった。
ミサイル防衛の代替としてするべき話ではなく、別の次元として整備する話だ。日米安全保障協力は双務的になるよう、日本は努力すべきだ。政治的な意味でも、外交的な意味でも、日米が一緒にやるということが重要だ。今の憲法でも、現行の日米同盟の範囲内でもできることはある。反撃能力もその中で考えていくべきだ。
日本が米国と同じ力を持つことはあり得ない。ただ、英国やフランス、ドイツ並みという目標は重要だ。威嚇されれば立つという構えが必要で、構えは口だけではできない。
佐々江 賢一郎氏(ささえ・けんいちろう)東大法卒。外務事務次官、駐米大使を経て日本国際問題研究所理事長兼所長。68歳。岡山県出身。
インタビューに答える前駐米大使の佐々江賢一郎氏=6日、東京都千代田区
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