浸水でも「川と共に」=昨年の台風19号で被災、営業再開の菓子店―福島

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昨年10月の台風19号で7人が死亡した福島県本宮市では、氾濫した阿武隈川沿いに約20店舗が並ぶ商店街も甚大な浸水被害を受けた。約2カ月で営業再開を果たした老舗菓子店「菓匠きねや」の店主窪田幸雄さん(56)は「幼い頃から川と共に暮らしてきた。この場所で頑張りたい」と奮闘している。

本宮市中心部は江戸時代に宿場町として栄え、今も歴史ある店舗が並ぶ。窪田さんは3代目として店の切り盛りをする中、台風19号に襲われた。「あんなに恐ろしい川は見たことなかった」。自身や家族らは無事だったが、店舗兼自宅は約1.6メートル浸水し、オーブンなどの設備が全て壊れた。

復旧作業に追われ先が見えない中、駆け付けた常連客から「誕生日ケーキを買いたい」「クリスマスには間に合う?」との励ましの声をもらった。期待に応えたい一心で設備を急ピッチでそろえ、昨年12月の営業再開にこぎ着けた。

しかし、約2000万円の損害額のうち、国の補助金などで補充できるのは1500万円程度。赤字経営を強いられる中、新型コロナウイルス感染拡大の影響で今春は地元イベントなどでの販売や、店内の喫茶コーナーの営業ができず不安が募った。

転機は、店のホームページなどで始めたインターネット販売。くず餅に地元産の果物などを入れて凍らせる「葛氷」がテレビで取り上げられると、全国から注文が殺到し、1日20件に上る日も。「諦めたら食べていけない。何かしなきゃ駄目だと思った」と語る。

窪田さんの地区の住民は、台風19号から1年を前に自主防災組織を立ち上げた。避難時に互いに声を掛け合うなど、教訓を生かして日常的に災害から身を守る訓練を続ける。

従業員から「川から離れた場所に移らないのか」と聞かれたこともあったというが、「やっぱり川を見ると落ち着くんです」と笑顔の窪田さん。「この場所で、お客さんの顔を見られる商売を続けたい」と話した。

台風19号の被害から営業再開させた老舗菓子店「菓匠きねや」の店主、窪田幸雄さん=6日、福島県本宮市台風19号の被害から営業再開させた老舗菓子店「菓匠きねや」の店主、窪田幸雄さん=6日、福島県本宮市

台風19号での氾濫を受けてかさ上げ工事が続く阿武隈川の堤防=6日、福島県本宮市台風19号での氾濫を受けてかさ上げ工事が続く阿武隈川の堤防=6日、福島県本宮市

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