復興の姿「ビールで伝える」=米から移住の醸造家―宮城・気仙沼

社会 暮らし

東日本大震災から9年9カ月。津波による壊滅的な被害から復旧した宮城県気仙沼市内湾地区には、今月開業1周年を迎えるクラフトビール醸造所がある。三陸沖を流れる黒潮にあやかり「ブラックタイドブリューイング(BTB)」と名付けられた醸造所には、ビールを通して復興した気仙沼の姿を伝えたいという作り手の願いが込められている。

米シアトル出身で、BTBの共同代表兼醸造長を務めるジェームズ・ワトニーさん(43)は、理論化学の博士号を持ち、前職は大手化学ソフトウエア会社の上席研究員という醸造家としては異色の経歴の持ち主だ。

クラフトビールが趣味で、米ポートランドの醸造所で知り合った日本人から新たな醸造所の立ち上げについて聞き、2018年11月に初めて気仙沼市を訪れた。復興の現場と町おこしに奮闘する人々を目の当たりにし、「このコミュニティーの一員となって、復興に関わりたいと強く感じた」と振り返る。

帰国の2カ月後に研究員の仕事を辞め、米国でビール作りを学んだ後、19年8月に妻と気仙沼市へ移住した。「安定した職を捨て、外国で醸造所を立ち上げることは前例がなく難しい選択だったが、この土地にはそれだけの魅力があった」と話す。

母国で「Kesennuma」と検索した際、津波被害の写真ばかりが表示され、現在の町の姿を伝える情報がないことに衝撃を受けた。その経験から、第一の目標に「町とブランドの結び付きを強固にし、ビールを通して復興した気仙沼の姿を広く発信すること」を掲げる。

「震災は知っているけれど、気仙沼という場所を知らない人も多い。ここには自然があり、漁業があり、優しい人々がいる」と話すジェームズさんは、「復興した気仙沼の姿を、BTBのビールを通して多くの人に知ってもらいたい」と意気込む。

クラフトビール醸造所「ブラックタイドブリューイング」で、煮沸釜に仕込んだ麦汁の様子を確認するジェームズ・ワトニーさん(左)=8日、宮城県気仙沼市クラフトビール醸造所「ブラックタイドブリューイング」で、煮沸釜に仕込んだ麦汁の様子を確認するジェームズ・ワトニーさん(左)=8日、宮城県気仙沼市

クラフトビール醸造所「ブラックタイドブリューイング」で、仕込んだ麦汁を発酵タンクに移すジェームズ・ワトニーさん=8日、宮城県気仙沼市クラフトビール醸造所「ブラックタイドブリューイング」で、仕込んだ麦汁を発酵タンクに移すジェームズ・ワトニーさん=8日、宮城県気仙沼市

[Copyright The Jiji Press, Ltd.]

時事通信ニュース 災害 暮らし 社会 社会一般 日本 東北 宮城県 米国