福島にロボット産業集積=被災地再生、産官学で人材育成―東日本大震災10年

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東京電力福島第1原発事故で、福島県沿岸部の地域経済は大打撃を受けた。国や福島県は地域の再生に向け、新たな産業を被災地に集積する「福島イノベーション・コースト構想」を進める。事故から間もなく10年を迎える中、ロボットなど先端産業を中心に全国から企業が進出。地元企業の参入も始まり、課題の人材育成にも産官学が連携した取り組みが動きだした。

約50ヘクタールの広大な敷地に滑走路や6階建てプラント―。2020年3月、南相馬市と浪江町に整備されていた研究開発拠点「福島ロボットテストフィールド」(RTF)が全面的に業務を開始した。研究棟や隣接の工業団地などには「空飛ぶクルマ」の開発やドローンの災害活用といった多様な目的で約30の事業者が入居。楽天をはじめ大手から全国各地のベンチャー企業も参入し、産業集積の中核として期待される。

工業団地への進出第1号は、ファクトリーオートメーションの技術開発などを手掛ける「ロボコム・アンド・エフエイコム」(東京)。国内外から技術者を集めて今年5月に工場を稼働させる。担当者は「設備や補助金が充実している」とRTFを高く評価する。

ただ、こうした先端産業集積の効果が地元経済に波及するには時間がかかりそうだ。南相馬市の商工会議所が19年度に地元企業に行ったアンケート調査では、製品開発や受注拡大への期待感を示した製造業は1割に満たなかった。

周辺地域は精密加工業が集まり、先端産業との親和性が高い。しかし、商工会議所の幹部は「原発事故によりスキルを持つ人材が流出した影響で、地元の中小企業が新規参入するハードルは高い」と指摘する。

こうした壁を乗り越えようと、地域の製造業約60社は16年、大学教授などの有識者を加えて「南相馬ロボット産業協議会」を設立。副会長を務める「タカワ精密」(南相馬市)の渡辺光貴取締役は、RTFに進出した企業などと連携して「いずれはロボットを収益の柱にしたい」と意気込む。

世界各地から最先端の人材を集める政府の「国際教育研究拠点」も23年に一部開設を目指す。機械科や産業革新科を設ける県立小高産業技術高校(同)は地域企業と連携した教育に力を入れており、生徒が在学中にIT分野の国家試験に合格するなど成果を挙げ始めている。

先端技術の研究開発拠点「福島ロボットテストフィールド」=2020年3月(福島県提供)先端技術の研究開発拠点「福島ロボットテストフィールド」=2020年3月(福島県提供)

「福島ロボットテストフィールド」で研究開発中の災害対応ロボット=2020年8月「福島ロボットテストフィールド」で研究開発中の災害対応ロボット=2020年8月

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