農林水産、宮城・岩手で震災前水準に回復=福島は道半ば、残る風評被害

政治・外交

東日本大震災の発生から10年。宮城、岩手両県では農林水産分野の生産額が震災前の水準に戻り、再生が進んでいる。一方で福島県も回復傾向にはあるものの、東京電力福島第1原発事故を受けた風評被害が根強く残り、復活は道半ば。被災地の完全復興には、韓国などによる輸入規制の撤廃実現を含め、乗り越えるべき課題が多い。

津波で養殖業が甚大な被害を受けた宮城県。2018年の海面漁業・養殖業生産額は、ギンザケ養殖の回復などを受け、震災前を上回る788億円に達した。岩手県はサンマの不漁などが続くが、18年は震災前とほぼ同額の378億円。農業生産額は両県とも震災前の水準を超え、宮城県は「稲作から(需要の高い)イチゴなどへの転作を進めた結果だ」(農政部)と再生に一定の手応えを感じている。

これに対し福島県では、原発事故で避難指示が出された地域のうち、営農再開に至ったのが昨年3月末時点で3割(面積ベース)と低迷。さらに「風評被害が強く影響している」(福島県農林水産部)。農産品の価格の回復が鈍く、農業生産額は震災前を下回っている。

水産業にはさらに、福島第1原発から出る放射性物質を含む処理水の問題も暗い影を落とす。政府は処理水の海洋放出を検討しているが、新たな風評被害につながりかねず、地元では「消費者の拒否感が出て食べてもらえなくなる」(福島県漁業協同組合連合会の野崎哲会長)と警戒する。

今後の復興に向け足かせになっているのが、各国・地域が導入した原発事故に伴う農林水産物・食品の輸入規制措置だ。15カ国・地域がいまだに解除しておらず、韓国は被災3県を含む水産物の禁輸を継続。同国向け輸出に頼っていた宮城県のホヤの養殖業者は別の出荷先を開拓できず、「多くが廃業の危機に陥っている」(宮城県漁業協同組合)という。

新型コロナウイルス感染拡大による観光客の減少も、復興に水を差している。岩手県では「品質には自信がある」(農林水産部)というアワビなどの消費量が鈍ったほか、宮城県は仙台牛の取引量が減少。福島県はヒラメなどが大きく落ち込み、県の担当者は「風評被害とコロナのダブルパンチだ」と表情を曇らせる。

担い手不足も深刻だ。少子高齢化が進む中、3県の18年の海面漁業就業者数は約1万3000人となり、08年の2万人超から大きく減少。農業経営体の数もこの10年でほぼ半減した。福島県の先の担当者は「外から人を呼び込む」と述べ、産業復興のためにも移住対策に力を入れる考えを強調した。

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