増やせ!段ボールベッド=大阪の社長「避難所の質向上を」―東日本大震災10年

社会

地震や豪雨などの災害発生時に、避難所で活用が広がる段ボールベッド。東日本大震災を契機に普及が進んだが、その立役者の一人が大阪府八尾市の段ボール会社「Jパックス」社長の水谷嘉浩さん(50)だ。医師や大学教授らでつくる「避難所・避難生活学会」の理事も務め、避難所の質の向上を訴えている。

水谷さんがベッド製作に取り組んだのは、東北の避難所で高齢者の低体温症が相次いでいる様子をテレビで見たことがきっかけだった。「断熱効果のある段ボールで寝床を作ればいい」。すぐ設計に着手し、発生から約20日後に200床、その1週間後には現在の形に近い改良型200床を、宮城県の石巻赤十字病院や避難所に届けた。

同病院の植田信策副院長(57)は、「見た目、耐久性に懐疑的だったが、寝てみるとしっかりしていて、これなら大丈夫と思った」と振り返る。

水谷さんは大手メーカーとも連携。約半年間で計2800床を届けたが、避難所への導入は思うように進まなかった。商売と間違われ、「帰れ!」と罵声を浴びたことも。植田副院長も「何とか交渉して入れてもらった」と話す。

「前例がないことは受け入れてもらえない。何か仕組みが必要だ」。水谷さんは設計図を無償で公開するとともに、自治体と防災協定を結び、ベッドを納入することにした。2016年には内閣府が避難所運営ガイドラインで段ボール製など簡易ベッドを推奨し、締結が加速した。

全国段ボール工業組合連合会によると、13年の佐賀県以降、20年8月までに43都道府県を含む58件の防災協定が結ばれた。水谷さんによると、この他に少なくとも360超の市区町村が段ボール会社と協定を締結している。

「ベッド自体の必要性や、粉じんの吸入抑制など医学的根拠への無理解との闘いだった」と、10年間を振り返る水谷さん。「ベッドだけでなく避難所のトイレや食事などの質を向上させ、災害関連死の防止や早期の生活復旧につなげたい」と話した。

避難所への段ボールベッドの普及に取り組んでいる「Jパックス」社長の水谷嘉浩さん=5日、大阪府八尾市避難所への段ボールベッドの普及に取り組んでいる「Jパックス」社長の水谷嘉浩さん=5日、大阪府八尾市

段ボールベッドを組み立てる北海道地震の避難者ら=2018年9月10日、北海道厚真町段ボールベッドを組み立てる北海道地震の避難者ら=2018年9月10日、北海道厚真町

熊本地震で、中学校の避難所に提供された段ボールベッドに横たわる人=2016年4月20日、熊本市南区熊本地震で、中学校の避難所に提供された段ボールベッドに横たわる人=2016年4月20日、熊本市南区

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