偶発的衝突のリスク=緊迫の海、日米抑止強化―台湾・尖閣対処・防衛省

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日米首脳会談は、東シナ海や南シナ海での中国の現状変更の試みなどに懸念を共有し、抑止力・対処力強化で一致した。防衛省は警戒監視や共同訓練を通じて在日米軍との連携を深めているが、緊迫化した空・海域に日米中の艦船・航空機が集中すれば、偶発的衝突のリスクも伴う。

日米首脳会談に先立つ3月の安全保障協議委員会(2プラス2)前後から、日米による実践的な共同訓練が目立っている。防衛省によると、3月下旬の海自イージス艦「こんごう」(長崎県・佐世保基地)と米海軍第7艦隊の指揮艦「ブルーリッジ」(神奈川県・横須賀基地)の訓練も日米同盟の抑止力強化と相互運用性の向上を目的に行われた。

ブルーリッジは第7艦隊の司令部機能があり西太平洋の軍事情報が集約され、こんごうは防空能力に優れる。沖縄県尖閣諸島や台湾海峡危機には、安全保障関連法に基づきブルーリッジを防護するシナリオもあり得る。

防衛省は共同訓練などの情報発信にも力を入れているが、一体的に活動すれば、対立が過熱化する米中の不測の事態に巻き込まれる懸念もある。

「相手を挑発しかねない」。米海軍が今月上旬にウェブサイトで公表した写真に日本政府内でこんな声がささやかれた。第7艦隊のイージス艦「マスティン」が中国軍空母「遼寧」を監視する場面を撮影したもので、艦長が足を投げ出して眺める様子が収められている。

政府関係者は「写真から推測すると米艦と遼寧の距離は2000メートルほど。中国空母を見下しているようにも受け取れ、無用な摩擦を生じかねない」と話す。沖縄近海を航行した遼寧に対しては、海自護衛艦と哨戒機(鹿児島県・鹿屋基地など)も追尾・監視していた。

日中防衛当局間のホットラインは、保全措置をめぐり調整中で開設には至っていない。衝突回避は現場の自衛隊が直接通信で中国軍艦艇・航空機とやりとりするしかない。東シナ海では2013年に海自護衛艦が中国艦から火器管制レーダーを照射され、南シナ海では18年に米イージス艦が中国艦に異常接近された。

海自トップの山村浩海上幕僚長は今月の記者会見で、「他国の軍艦とすれ違うときは共通の周波数でコミュニケーションは取れている。意思疎通はできており現時点では問題ない」としている。

海上自衛隊のイージス艦「こんごう」(手前)と米海軍第7艦隊の指揮艦「ブルーリッジ」(奥)の共同訓練=3月29日、東シナ海(米第7艦隊提供)海上自衛隊のイージス艦「こんごう」(手前)と米海軍第7艦隊の指揮艦「ブルーリッジ」(奥)の共同訓練=3月29日、東シナ海(米第7艦隊提供)

中国軍空母「遼寧」を、足を投げ出してリラックスした様子で眺める米海軍第7艦隊のイージス艦「マスティン」の艦長(左)ら=4日、フィリピン海(米海軍ホームページより)中国軍空母「遼寧」を、足を投げ出してリラックスした様子で眺める米海軍第7艦隊のイージス艦「マスティン」の艦長(左)ら=4日、フィリピン海(米海軍ホームページより)

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