拉致・北方領土は停滞=新型コロナも影響―菅外交

政治・外交

北朝鮮による日本人拉致問題、ロシアとの北方領土交渉がともに停滞している。菅政権は二つのテーマを安倍政権から積み残しの課題として引き継いだが、昨年9月の政権発足から7カ月半を経てもなお、具体的な取り組みが見えてこない。国内の新型コロナウイルス感染拡大も影響し、優先順位が低下している。

拉致問題をめぐり、菅義偉首相は政権スタート時に、加藤勝信官房長官を担当相に充てるとともに、自ら先頭に立って解決を目指す意向を表明。昨年10月の所信表明と今年1月の施政方針の演説では、拉致問題をいずれも「政権の最重要課題」と位置付けた。

しかし、その後、日朝当局間の接触は確認されていない。日本政府関係者は現状について「(北朝鮮情勢を)高い関心を持って注視しているとしか言えない」と、進展がないことを示唆する。

首相は金正恩朝鮮労働党総書記と無条件で日朝首脳会談を行うとしているが、めどは立っていない。夏の東京五輪をきっかけに金総書記の妹、与正氏らの訪日も念頭に対話の機会を探っていたが、新型コロナを理由に北朝鮮が五輪不参加を決定。期待した「五輪外交」も不発に終わりそうだ。

対ロ外交も前進の兆しが見えないのは同じ。安倍晋三前首相は第2次政権以降、プーチン大統領と計24回の会談を重ねた。2019年に首脳会談は3回、20年も電話会談が2回行われた。これに対し、菅首相は就任直後に電話会談を1回こなしただけで、今年に入ってからは接点がない。

プーチン氏と個人的な信頼関係を築いたとされる安倍氏でさえ、外交巧者のロシアを相手に領土交渉を続けるのは容易でなかった。現状ではロシアが改正憲法に「領土割譲禁止」条項を盛り込み、北方領土の軍事拠点化を進めるなど、交渉の前提条件も悪化している。

菅首相も意識はしているようだが、いまはコロナ対応を優先せざるを得ない事情もある。4月28日に日本維新の会の鈴木宗男参院議員と面会した際、「まずはコロナ収束に向けて頑張らなければいけない。その流れを見ながら対面外交はしていきたい」とだけ語った。

もっとも、周囲が首相に外交への熱意を感じ取れないのも事実。政府関係者は「安倍政権では『チーム安倍』と呼ばれた人たちが前に進めようとしていたが、菅政権にそうしたメンバーはいない。首相は外交で失点をしたくない。北方領土も手を着けないだろう」との見方を示した。

[Copyright The Jiji Press, Ltd.]

時事通信ニュース 政府・内閣 外交 日本 北朝鮮 ロシア