長州戦争、残る遺恨=党本部裁定、程遠い「円満決着」―山口3区【注目区を行く】

政治・外交

首相の座を目指し、参院からくら替えして地元山口3区での出馬を決めた林芳正(岸田派)と、長年同区の議席を守ってきた元官房長官河村建夫(二階派)の2人が公認をめぐり衝突した「長州戦争」。公示直前の党本部裁定で、河村は引退、長男建一は比例代表で処遇、林は公認―がセットで決まり、自民分裂の事態は一応回避された。しかし、一方的に撤退を強いられた河村側の遺恨は残り、「円満決着」とは程遠い。(敬称略)

◇必要なのは首相候補

「岸田政権にとって最初の国民の審判だ。政権をつくった一人として負けられない。全身を粉にして最後まで戦い抜く」。公示日の19日、山口県宇部市内で開かれた出陣式で林は声を張り上げて聴衆に訴えた。だが、演説の壇上に河村とその関係者の姿はなかった。

元蔵相の義郎を父に持ち、党内で指折りの政策通として知られる林。参院議員で計5度の閣僚就任という異例の抜てきぶりからは、党内の信頼が厚いことがうかがえる。

2008年ごろからくら替えを模索。林を支援する県議の一人は、参院議員だった林が17年の文部科学相就任時、首相安倍晋三(当時)に「次期衆院選に出馬するため、次の入閣要請は受けないと直接伝えていた」と証言する。ただ、同年の衆院選でもくら替えせず、時機をうかがってきた。

衆院定数の新たな配分方式導入に伴い、山口では早ければ次回衆院選から定数が1減り、3となる見通し。林としては今回がくら替えの最後のチャンスだったと言える。

県連側も林を猛プッシュした。主導したのは県議の重鎮で県会議長の柳居俊学。今年7月、党県議26人連名で林への支援を約束する連判状をまとめ、県下の地域・職域支部にも圧力をかけた。

県連が現職の河村から林に大きく流れたのは、柳居の存在だけではない。山口は安倍ら全国最多8人の首相を輩出した保守王国。林陣営の県議はこう解説する。「山口では総理になれない候補はいらんのよ」

◇総裁選で力関係一変

衆院解散を翌日に控えた今月13日の党本部。幹事長甘利明、選対委員長遠藤利明が待つ幹事長室に河村が入った。執行部側は、河村に出馬見送りを打診した。

河村はその日のうちに山口に帰り、後援会に「引退勧告があった。意見を聞きたい」と説明。出席者によると、河村の表情は淡々としていたというが「内心は激怒していただろう」と推察する。無所属での出馬強行を求める意見も出されたが、最後は河村本人に対応を一任し、ねぎらいの拍手でその場は終わった。

河村は当初、安倍・菅政権で幹事長に君臨した二階俊博を後ろ盾に林と争う構えだった。だが、岸田文雄の総裁選勝利で、岸田と敵対する二階はポストから降ろされ、影響力が急降下。河村側の勢いは大きくそがれた。

逆に岸田体制発足を受け、岸田派の林に有利な状況に一変。河村に近い県議は「二階さんならこんなことはしなかったはずだ。不本意な形で素晴らしい政治家を失った」と唇をかんだ。

比例中国ブロックの名簿に登載されると予想された建一が、縁がないに等しい北関東ブロックに置かれたことにも不満が渦巻く。建一は20日、山口県萩市内で出陣式を行い、「必ずふるさとに戻ってくる」と声をからした。

もっとも、県連内では、建一を中国ブロックで処遇することに異論が持ち上がり、県連会長岸信夫名で党本部に「抗議文」を送る動きもあった。河村親子を取り巻く状況は厳しい。

◇牙城に挑む

「市民の代表として勝ち上がっていきたい」。野党側が統一候補として擁立した立憲民主党公認の坂本史子はこう意気込む。全国一律最低賃金1500円実現、食料自給率向上を掲げ、保守王国の牙城切り崩しを狙う。

◇立候補者名簿

【山口3区】

坂本 史子 66 元目黒区議 立 新

林  芳正 60 元文科相  自 新

推(公)

※敬称略。届け出順。年齢は投票日現在。立=立憲民主党、自=自民党。丸かっこは推薦政党。

衆院選山口3区立候補者の街頭演説に集まった聴衆=20日午前、山口市(一部画像処理しています)衆院選山口3区立候補者の街頭演説に集まった聴衆=20日午前、山口市(一部画像処理しています)

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