銀座・カジノ、不祥事の代償=自民離れた2人のその後―神奈川1区、東京15区【注目区を行く】
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新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言下での東京・銀座の高級クラブ訪問、カジノを含む統合型リゾート(IR)事業をめぐる汚職―。衆院選では自民党を揺るがせた二つの不祥事にも国民の審判が下る。厳しい批判を浴び、離党に追い込まれた当事者2人の払った代償は大きい。(敬称略)
◇無所属の悲哀
「軽率な行動を取ってしまった。誠に申し訳ありません」。21日昼のJR桜木町駅前。神奈川1区から無所属で出馬した前職の松本純は、神妙な表情でこう口にした。
松本が聴衆に謝罪したのは、深夜のクラブ通いのことだ。党国対委員長代理だった今年1月、緊急事態宣言下で不要不急の外出自粛要請が出ている夜8時以降に銀座のクラブを訪れていたことが発覚。離党勧告を受け、2月に離党した。
地元の反発は激しかった。「松本、出てこい」。事務所には外から罵声が浴びせられ、1日100本に上る抗議の電話が鳴り響いた。とても活動できる雰囲気ではなく、夏前にようやくおわび行脚を開始。だが、女性を中心に拒絶反応は消えていなかった。
無所属は政党公認と異なり、選挙運動の制約が多い。法定はがきや街頭で配るビラの枚数が政党公認より少なく、政見放送にも出られない。何より松本にとって当たり前だった党の全面支援を受けられない。比例代表に重複立候補し、小選挙区で敗れた場合に復活当選する道も閉ざされる。
公示直前には復党も取り沙汰されたが「批判は確実。あおりを受けて何十人も犠牲になる」(関係者)と衆院選への影響を危惧する声が噴出し、幹事長の甘利明は見送りを表明した。
派閥で仕えた副総裁の麻生太郎やその盟友である元首相の安倍晋三、同じ神奈川県選出の河野太郎らが応援に駆け付けるが、「1票でも負けたら落選」。後がない陣営に余裕はない。
立憲民主党前職の篠原豪は「有権者からは真面目に政治をしてほしいという声を聞く」と力を込める。日本維新の会新人の浅川義治は、街頭で第三極としての存在をアピールする。
◇出馬辞退
IRをめぐる汚職事件で9月に実刑判決を受けた秋元司は、自民党離党後も無実を訴え、東京15区から4選出馬を目指していた。党本部に「無所属で戦いやすい環境をお願いしたい」と、他の公認・推薦候補を立てないよう何度も働き掛けた。
だが、事件の影響で自民内では、秋元以外の擁立を模索する動きが進行。衆院選で旧希望の党などから出馬し、過去3回秋元と戦った柿沢未途の名前が挙がった。柿沢は所属していた衆院の立民会派を離脱。出馬準備を整えた。
一方、柿沢と長年対立してきた地元の拒否反応は強く、柿沢の動きが表面化すると、都連は愛知県が活動拠点の元職、今村洋史の公認を党本部に申請。最終的に党本部が出した結論は「2人を無所属候補とし、推薦する」という折衷案だった。事実上の自民分裂の構図だ。
秋元は蚊帳の外に置かれた。しかし、自らも出馬し乱戦になれば、野党を利する可能性もある。「私が出馬すると政党政治を否定する行為につながる」。秋元は公示前日の18日に記者会見し、不出馬を表明した。
繰り返される「政治とカネ」の問題。秋元の事件は結果的に地元に混乱をもたらした。「どちらをやればいいのか」。2人の無所属候補を前に自民支援者からは戸惑う声が出ている。
◇漁夫の利狙う
別の選挙区から15区に移ってきた立民元職の井戸正枝は、IR事件を念頭に「利権構造の中で政治を行ってきた」と自民を批判、分裂による漁夫の利を狙う。維新新人の金沢結衣の陣営も「自民票が割れてくれれば」と語る。
◇立候補者名簿
【神奈川1区】
浅川 義治 53 元市議 維 新
松本 純 71 元防災相 無 前
篠原 豪 46 元市議 立 前
【東京15区】
桜井 誠 49 政治団体代表 一 新
井戸 正枝 55 元兵庫県議 立 元
柿沢 未途 50 元予算委理事 無 前
推(自)
猪野 隆 56 元国税庁職員 無 新
今村 洋史 59 医師 無 元
推(自)
金沢 結衣 31 元会社員 維 新
吉田 浩司 61 会社員 無 新
※敬称略。届け出順。年齢は投票日現在。維=日本維新の会、無=無所属、立=立憲民主党、一=政治団体日本第一党、自=自民党。丸かっこは推薦政党。
街頭演説に集まった聴衆=21日、横浜市(一部、画像処理してあります)
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