「代理戦争」消えぬ火種=二階派VS他派閥―静岡5区、群馬1区【注目区を行く】

政治・外交

自民党二階派と他派閥が選挙区の公認をめぐり激しく衝突した「代理戦争」。党本部裁定で多くは整理されたが、静岡5区は事実上の保守分裂となった。二階派特別会員で自民入りを目指す無所属の細野豪志、党公認で岸田派所属の吉川赳の2人が4度目の対決に臨む。一方、群馬1区の公認調整は二階派に軍配が上がり、奪われた細田派の不満はくすぶる。(敬称略)

◇裏切り者と呼ばれ

「自民党に入ってこの国を守っていきたい」。21日夜、静岡県小山町。小さなコインランドリーの駐車場で、細野は支持者約50人にこう訴えた。20日の演説の際に以前の女性支援者から「裏切り者」とののしられたことも明かし、「こういう方々の声も全部受け止めようと思う」とも語った。

旧民主党出身で、旧希望の党などを経て無所属となった細野。2019年1月、自民幹事長として権勢の絶頂にあった二階俊博率いる二階派に特別会員として入会し、入党への布石を打った。

しかし、先の党総裁選で岸田文雄が勝利。敵対する二階は失脚し、情勢は変化した。細野が執行部などに入党を認めさせるには、競合する吉川の比例代表での復活当選を許さない「圧勝」(二階派幹部)が至上命令だ。

吉川は神経をとがらせる。細野とは過去3回対決してきたが小選挙区は全敗。17年の前回衆院選は落選し、その後、繰り上げ当選で議員バッジをつけた。小選挙区勝利には常に細野という壁が立ちはだかる。

「岸田総裁が誕生した今だからこそ、私が地域で学んだことをしっかりと伝えていける」。吉川は21日、JR足柄駅前の演説で派閥会長・岸田とのつながりを強調。「総裁派閥の公認候補」という立ち位置を最大限にアピールし、支持を呼び掛けた。

細野の自民入りに反発する静岡県連も吉川を後押しし、地方議員らを支援に送り込むなど組織をフル稼働させる。静岡の「代理戦争」に終わりは見えない。

立憲民主党新人、小野範和は「ふるさとに恩返しを」と訴え、支持拡大を図る。

◇怒る細田派

かつて福田赳夫、中曽根康弘、小渕恵三各元首相が争った「上州戦争」をほうふつとさせる二階、細田両派による群馬1区の公認争い。公示直前の15日、党本部は二階派の中曽根康隆を選挙区から擁立し、細田派の尾身朝子を比例代表に回す決定を下した。前回衆院選と入れ替えた形だ。党の情勢調査で中曽根が優位に立っていたことが決定打となった。

18日、尾身は前橋市の中曽根の事務所を訪れ、「和解」を演出。ただ、面会時間はわずか10分足らずで、尾身は面会後、「お互い頑張ろうと確認した」と記者団に説明すると足早に事務所を後にした。尾身周辺は「後援会は1区で戦う準備をしていた。比例転出に動揺している」と憤る。

一方、22日の群馬県渋川市での街頭演説で中曽根は「たすきに自分の名前が書いてある。4年前は自民党というたすきだった」と選挙区での出馬を誇った。陣営は尾身が前回獲得した9万票を超える12万票を目標に掲げる。陣営幹部は「自分たちの戦いをするだけ」と語り、尾身側との連携は意識していない。

土壇場で分裂選挙の事態は回避された。だが、細田派は尾身の今後の選挙区復帰を捨てたわけではない。火種は残ったままだ。

野党は候補者一本化が実現せず、3人が乱立した。立憲民主党県連が支援する無所属の斉藤敦子、旧民進党出身で元職の宮崎岳志が日本維新の会の公認を得て参戦。共産党新人の店橋世津子も支持を訴える。

◇立候補者名簿

【静岡5区】

細野 豪志 50 元環境相   無 前

小野 範和 48 元銀行員   立 新

吉川  赳 39 元復興政務官 自 前

千田  光 43 自営業    諸 新

【群馬1区】

中曽根 康隆 39 元議員秘書  自 前

推(公)

斉藤 敦子  53 元大学准教授 無 新

宮崎 岳志  51 行政書士   維 元

店橋 世津子 60 元前橋市議  共 新

※敬称略。届け出順。年齢は投票日現在。無=無所属、立=立憲民主党、自=自民党、諸=諸派、公=公明党、維=日本維新の会、共=共産党。丸かっこは推薦政党。

衆院静岡5区の候補者の演説を聞く支援者=21日、静岡県小山町のJR足柄駅前(一部画像処理しています)衆院静岡5区の候補者の演説を聞く支援者=21日、静岡県小山町のJR足柄駅前(一部画像処理しています)

衆院群馬1区の候補者の演説を聞く支援者=22日、群馬県渋川市衆院群馬1区の候補者の演説を聞く支援者=22日、群馬県渋川市

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