首相、窮余の方針転換=実効性課題、成立見えず―救済新法

政治・外交

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害救済・防止を図る新法について、岸田文雄首相が今国会に提出する考えを表明した。自民党は消極的で首相も静観していたが、風当たりの強さを見て急きょ方針を転換した。ただ、世論の納得を得られるだけの実効性の伴うものになるか不透明。12月10日まで残り約1カ月の会期内に成立できるかも焦点だ。

「今国会を視野にできる限り早く提出すべく最大限の努力を行う」。首相は8日、首相官邸で記者団にこう強調。これに先立つ公明党の山口那津男代表との会談で、こうした方針を確認した。

立憲民主党と日本維新の会は(1)寄付や物品購入は年収の4分の1を上限とする(2)マインドコントロール下の高額献金は被害者の家族も取り消し請求できる(3)不適切な献金の勧誘に罰則を設ける―を盛り込んだ法案を共同提出。教団に対する世論の反発を背景に、与党との4党協議で新法の今国会成立を迫ってきた。

これに対し、与党は「寄付上限設定は寄付文化を萎縮させる」などとし、来年の通常国会への先送りを主張。首相は創価学会を支持母体とする公明党への配慮もあり、「与野党協議を参考に検討し、準備できたものから臨時国会に提出したい」と語るにとどめていた。

方針転換は内閣支持率の続落が背景にある。物価高対策を盛り込んだ総合経済対策を10月下旬に決定。政府関係者は政権浮揚に期待を寄せた。だが、読売新聞が今月4~6日に実施した世論調査で支持率は9ポイント減の36%。救済法案の今国会成立を求める声は73%に上った。

首相が記者団に説明した新法の内容は、寄付の悪質な勧誘禁止や取り消し、家族の被害救済が柱。野党側が「目玉」とした寄付の上限設定や「マインドコントロール」の条文盛り込み、罰則導入にはなお慎重だ。憲法が保障する信教の自由を勘案し、自民党幹部は野党案を「無理筋」と批判する。

松野博一官房長官は7日に公明党の石井啓一幹事長と会い、内容を事前に伝達。同党は党首会談に応じたが、幹部は「寄付の規制や家族の損害賠償請求は内閣法制局の審査を通るのか」と疑問視。「官邸が焦ってぶれている」と指摘した。

立民は「われわれの重視する点が何も入っていない」(幹部)と反発している。安住淳国対委員長は、自民党が8日の国対委員長会談に応じなかったことを理由に今後の日程協議に応じない意向を示した。自民党からは「与党の法案審査も終えていないのに間に合うのか」(幹部)と危ぶむ声が出ている。

首相官邸に入る岸田文雄首相=8日、東京・永田町首相官邸に入る岸田文雄首相=8日、東京・永田町

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