製造業、じわり国内回帰=地政学リスク警戒、円安も後押し―供給網課題、根強い慎重論

経済・ビジネス

製造業各社の間で、海外生産拠点の国内移管を検討する動きがじわりと広がっている。中国を巡る地政学リスクの高まりに加え、海外での人件費上昇、円安進行もこの流れを後押しする。しかし、「国内回帰」にはさまざまなハードルがあり、今後の事業環境などを慎重に見極めようとする姿勢も根強い。

「安い賃金を求めて(海外に)出たが、魅力が少なくなっている」。キヤノンの御手洗冨士夫会長兼社長は10月の記者会見でこう述べ、中国や東南アジアなどで生産体制を見直す方針を示した。「円安も大きな理由の一つ」としており、「メインの工場を日本に持って帰る」と強調。既にデジタルカメラの生産を国内に戻したほか、今後は事務機器も移す。

ダイキン工業の十河政則社長は、生産が海外に偏ることのリスクを指摘し、「事業継続計画の観点からも国内回帰を考えないといけない」と説明した。滋賀県の工場で空気清浄機の生産を始めたほか、エアコンの国内移管も検討中で、日本での工場新設も「当然あり得る」としている。シャープは、調理家電などについて「(コスト的に)メリットがあれば国内生産に戻す」(沖津雅浩副社長)考えだ。

ただ、生産拠点を移転する場合、部品供給網の再構築などに手間がかかり、海外に移した拠点を国内に戻すのは容易ではない。海外に工場を置けば、現地の市場に効率的に製品を出荷できる利点もある。輸出競争力強化につながる円安の進行を受けてもなお、国内回帰に二の足を踏む企業は少なくない。

トヨタ自動車の近健太副社長は「短期的な為替の変動で、生産場所をあちこちに動かすのは難しい」と指摘。三菱重工業の泉沢清次社長も、国内回帰について「(すぐには)考えていない。ある程度長いレンジで見ていく」と慎重に検討する構えだ。

経済産業省の海外事業活動基本調査によると、製造業の売上高に占める海外現地法人の割合を示す海外生産比率は、2020年度に23.6%と9年連続で2割を超えた。00年度の11.8%に比べ2倍に上昇している。

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