政府との共同声明、柔軟性確保=見直しは「慎重さ必要」―白川前日銀総裁

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政府・日銀が2013年1月に上昇率2%の物価目標を明記した共同声明を取りまとめてから10年が経過した。当時、日銀総裁だった白川方明青山学院大特別招聘(しょうへい)教授は時事通信のインタビューに応じ、「2%を掲げても、機械的に追求しなくて済むよう柔軟性を確保することが最大の課題だった」と強調。政府との「政策協定」と位置付けられ、物価だけに注目した硬直的な金融政策を強いられるのを回避することに「全精力をつぎ込んだ」と振り返った。

共同声明を巡っては、政府内で見直し論も浮上。岸田文雄首相は昨年末の講演で、見直しに関して「今の段階で時期尚早だ」としつつ、「まずは新総裁を決めてからの話だ」と含みを持たせた。

白川氏は「見直しには慎重さが必要だ」と語った。総裁交代のたびに見直しを行うと、任期後半にかけて不要な思惑を生み出し、市場が不安定化すると懸念。数カ月で結論を得られるような簡単な問題ではなく、「議論が熟すのを待った方がいい」との見解を示した。

共同声明の作成過程では、政府が物価目標の達成時期として「2年程度」と明記するよう求めたのに対し、日銀は最後まで反対。結局、「できるだけ早期」という表現に落ち着いた。物価だけでなく金融の不均衡などのリスク点検も書き込まれ、白川氏は「柔軟性は確保した」と語った。

目標の2%については「物価の安定というイメージを伝える上では意味があるが、水準自体には確固とした理論的な基礎はない」と指摘した。日本経済は「今後の人口減少を考慮すれば、長い目でみて成長率が下がっていくことは、ほぼ確実だ」と分析。日本が目標とすべき物価上昇率は「欧米などに比べてたぶん低いだろうが、いずれにせよ絶対視は危険」と述べた。

昨年12月の消費者物価は4%と高い伸びになっているものの、日銀は23年度以降は再び2%を下回ると予想。声明から10年経過しても、2%の物価目標の持続的な達成には至っていない。

共同声明の作成当時、デフレは日銀の金融緩和が足りないからと批判が高まった。白川氏は「(大規模緩和という)社会実験を10年やっても物価は上がらなかったし、潜在成長率は下がった。時間を明らかに無駄に費やした」と言及。その上で「物価下落が低成長の原因ではないとの理解が本当に行き渡ったか、やや疑問だ」との見方を示した。

インタビューに答える白川方明前日銀総裁=19日、東京都渋谷区インタビューに答える白川方明前日銀総裁=19日、東京都渋谷区

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