女性・待機組を積極登用=岸田首相、総裁再選へ多方面に配慮―安定重視も火種抱える
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岸田文雄首相(自民党総裁)が13日に行う内閣改造・党役員人事は、政権安定を最重視しつつ、女性議員と各派閥の「入閣待機組」も積極的に取り込んだ。世論の動向と各派閥の意向の双方に配慮した。年内の衆院解散・総選挙も取り沙汰される中、首相は来年秋の総裁再選を最大の目標として新たな布陣を構想したが、火種も抱えた再出発となりそうだ。
再改造内閣の閣僚19人のうち女性は5人で、現在の2人から大幅増。外交の継続性の観点から続投するとみられていた林芳正外相は同じ岸田派の上川陽子幹事長代理と替わる。上川氏はこれまで3回法相に就任し、安定感には定評がある。子育て世代の加藤鮎子氏をこども政策担当相に充て、刷新感もアピールする。
党人事では、選挙実務を担う選対委員長に茂木派の小渕優子氏を起用。同派会長の茂木敏充幹事長が留任するため党四役のうち2ポストを同一派閥で占めることになり、他派閥から不満が出る可能性もある。
内閣の要となる官房長官や財務相が留任するのは、最大派閥の安倍派と第2派閥の麻生派のバランスも考慮した結果だ。首相が前回総裁選を争った高市早苗経済安全保障担当相、河野太郎デジタル相も閣内にとどめる。各派が推した入閣候補も一部受け入れた。総裁選を意識した「総主流派」体制づくりが明確となった。
◇青木氏の遺志
小渕氏登用の背景には、「参院のドン」と称され、6月に死去した青木幹雄元官房長官の「遺志」が働いた。安倍派に今も影響力を及ぼす森喜朗元首相が実現に動き、首相は長老らの期待に応えた形となった。
「心残りは小渕(恵三元首相)さんのお嬢さんのことだろう。あなたの夢、希望がかなうよう最大限努力する」。森氏は8月29日、青木氏の党葬で弔辞を述べ、早大時代からの青木氏との長い交流を振り返りながらこう締めくくった。党葬には首相も参列した。
青木氏は小渕内閣で官房長官を務め、父の急死で地盤を継いだ優子氏を目にかけてきた。昨年8月、早大つながりの首相と森、青木両氏が会食。青木氏はこの場に同席した小渕氏を「登用してほしい」と首相に直談判した。
会長不在の安倍派の新指導部の顔触れは、森氏の意向に沿う形で決着した。首相とすれば「森氏の意向に応じれば、来年秋の総裁選で安倍派の支持を得られやすくなる」(政府関係者)との思惑もあった。
青木氏は首相に、かねて折り合いの悪かった茂木氏を要職から外すよう言い残していたとされる。「ポスト岸田」への野心をちらつかせる茂木氏と同じ党四役に小渕氏を充てることで、茂木氏の突出に歯止めをかける効果も期待したとみられる。
◇今なお「説明不足」
小渕氏の起用は「もろ刃の剣」となりそうだ。政治資金問題で2014年に経済産業相を辞任したが、今も「説明不足」の烙印(らくいん)を押されたまま。小渕氏は13日の就任会見で早速、質問を浴びることになり、再びこの問題が蒸し返される可能性もある。
野党も秋の臨時国会などで政権への攻勢を強める構え。立憲民主党の岡田克也幹事長は12日の記者会見で、小渕氏について「説明が十分だとは思っていない。より説明責任が求められる」と指摘した。
自民党役員会に臨む岸田文雄首相=12日午前、東京・永田町の同党本部
記者会見する自民党の茂木敏充幹事長=12日午前、東京・永田町の同党本部
自民党役員会に臨む小渕優子組織運動本部長=12日午前、東京・永田町の同党本部
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