山上被告に無期求刑=検察側「前例なき犯行」、「絶望の果て」と弁護側―安倍氏銃撃・奈良地裁

社会

奈良市で2022年、参院選の応援演説中だった安倍晋三元首相を手製銃で殺害したとして、殺人などの罪に問われた山上徹也被告(45)の裁判員裁判の第15回公判が18日、奈良地裁(田中伸一裁判長)で開かれた。検察側は「わが国の戦後史に前例を見ない、極めて重大な犯行。動機は短絡的かつ自己中心的で、酌量の余地はない」として無期懲役を求刑した。弁護側は最終弁論で有期刑を求め、結審した。判決は来月21日に言い渡される。

論告で検察側は「特定の団体にダメージを与えるために暴力的手段に訴えることは、法治国家において絶対に許されない」と強調。母親が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に多額献金するなどした被告の生い立ちについて「犯行の意思決定に与えた影響は極めて限定的だ」として、刑罰を軽くする事情には当たらないと訴えた。

一方、弁護側は「自分の将来を失った者の絶望の果ての犯行と言うべきだ」と反論。被告は宗教が関わった虐待の被害者で、母親の入信をきっかけに家庭が崩壊した悲惨な境遇が犯行動機と直結しており、「生い立ちは最も重要視されるべき情状事実」と主張した。

その上で、手製銃は銃刀法上の「拳銃等」に当たらず発射罪は成立しないと主張し、「刑期は最も重くとも20年までにとどめるべきだ」とした。

論告に先立ち、安倍氏の妻昭恵さんの心情を代理人が読み上げた。被告に対し、昭恵さんは「自分のしたことを正面から受け止め、罪をきちんと償うことを求めます」と訴えた。

最終弁論の後、裁判長から言いたいことがあるか問われた被告は「ありません」と述べ、最終意見陳述をしないまま法廷を後にした。

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