ガザ医療「カバーできず」=イスラエルの活動許可取り消し―国境なき医師団日本人職員

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【カイロ時事】イスラエル政府が国際NGOの活動許可を取り消した問題で、国際医療団体「国境なき医師団(MSF)」のパレスチナ自治区ガザでの人道支援が2月いっぱいで停止を余儀なくされる。現地で活動したMSF職員の松田隆行さん(40)=東京都出身=は、滞在先のエジプトの首都カイロで取材に応じ、「医療ニーズをカバーできなくなる」と危機感をあらわにした。

MSFはガザで複数の医療機関を支援し、対象の病床数はガザ全体の5分の1に及ぶ。イスラエル軍は、昨年10月のイスラム組織ハマスとの停戦後も、ハマス側の合意違反を主張して攻撃を実施。パレスチナ人同士の衝突もあり、情勢は安定しない。復興も進んでおらず医療のニーズは依然として高い。

松田さんは昨年12月から今月12日まで、ガザで物資調達や機材整備などに従事。南部マワシを拠点に、ハンユニスの基幹病院ナセル病院で医療現場をサポートした。

日常的に爆撃音が響き、イスラエル軍の支配地域から約1キロのMSF拠点に流れ弾が着弾することもあった。MSFは1月20日付でナセル病院での活動を休止せざるを得なくなった。

昨夏にガザに入った際は、イスラエル軍の激しい攻撃が続き、食料危機が叫ばれていた。停戦が発効し、現在は食料の流通量が一定程度改善。しかし、ビニールシートで覆っただけの避難テントが延々と広がる光景は以前と同じで「過酷な生活環境は全く変わっていない」と強調した。

昨年12月はMSFが利用する車のタイヤや発電機の部品はイスラエル側が「軍事転用可能」と判断し、搬入できなかったという。今年1月以降はその他の物資も入れられず、世界保健機関(WHO)などから医療品の寄付を受け、何とか活動を続けている。

イスラエル政府は新たに導入したNGOの登録制度で、現地採用を含む職員の個人情報を提示するよう要求。イスラエル軍の攻撃で職員が死亡したMSFなどは、安全が保証されないとして提出を拒み、1月にNGO37団体の活動許可取り消しが発表される事態となった。MSFの国際職員は2月中にガザから引き揚げる。

3月以降、現地職員だけで活動を続ける選択肢もあるが、松田さんは国際職員不在の状況で「現地職員の安全が確保できるか分からない」と懸念。活動継続は不透明だと語った。

取材に応じる「国境なき医師団(MSF)」職員の松田隆行さん=15日、カイロ取材に応じる「国境なき医師団(MSF)」職員の松田隆行さん=15日、カイロ

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