原子力の未来を見つめて

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日本国際問題研究所の軍縮・不拡散促進センター所長で、元国連事務次長の阿部信泰氏は、復興に当たって、原子力に対する国の姿勢を問い直すと同時に、安全と不拡散という2つの観点から原子力の未来を再考しなければならないと論じる。

想像を絶する津波の猛威

あのマグニチュード9.0の地震が襲ったとき、私は、2030年ごろの日本の未来像について話し合うシンポジウムに出席していた。そのとき、大地震が会議場を揺るがした。地震と津波、続いて起きた原発事故による打撃が、日本の未来像を変えてしまうことは間違いない。だが、どのように変わるかはまだわからない。現時点でもなお被害の全容は把握できておらず、犠牲者数も物的損害の規模もつかみきれていない。さらに懸念されるのは、福島原子力発電所の危機的な状況をいつ収拾できるのかまだ不透明なことだ。

地震国である日本では建築物は耐震構造となっており、大半の建物は今回の揺れにも持ちこたえた。これほど多くの人命が奪われた原因は、地震の後に襲ってきた津波だった。津波警報は地震直後に発令されたが、一部では14メートルに達したという津波の猛威は想像を絶するものだった。

原発の状況

原子力発電所も地震に耐えるように設計されている。振動によって破損した原子炉は一基もなく、自動停止装置が設計どおり機能した。だが、予想されていなかったのは、福島第一原発に電力を供給していた電気系統の故障だった。地震後、予備のディーゼル発電機が作動して原子炉の冷却システムを動かし続けたが、この予備システムが津波で水浸しになり、間もなく停止してしまった。続いて水素爆発が起こり、放射性物質を含む蒸気が放出された後、原子炉と燃料貯蔵プールに海水が投入された。

東京電力は政府と一丸となり、冷却システムの復旧と放射能汚染を食い止めるために苦闘したが、この間に発揮された協力と自己犠牲の精神は、注目に値する。日本人がこの未曾有の惨事を比較的冷静に落ち着いて受け止めている事実は、海外からも関心を集めている。地震と津波に打ちのめされた被災地で、このような日本の精神が示されている事実は素晴らしい。そして、日本に対し全世界から寄せられた同情と支援には非常に勇気づけられる。

日本人が懸命に努力してこの惨禍から立ち直り、経済再建を成し遂げることを私は確信している。だがその過程において我々は、次のような疑問を、特に原発問題を中心に、熟考していかなければならない。

事故の原因は何か、それにどう対処すべきか

第一の疑問は、福島第一原発ではこのように深刻な事故が起きたのに対し、10キロ南にある福島第二原発や、地震の震源により近かった女川原発はなぜ無事だったのか、という点である。問題は設計ミスだったのか。東京電力の対策に手落ちがあったのか。危機管理機関の対応が不適切だったのか。それとも、自然の力が人智を圧倒した結果としか言いようがないのか。

マーフィーの法則は、「問題が起こり得るなら、それはきっと起こる」と指摘している。人間に過ちがつきものであるならば、今回のような事故の再発を回避するにはどうすればよいのか。多くの技術的な改善が既に提言されている。より高い防潮堤を築く。予備の発電機を海岸から離れた高台に移動させる。配線に防水加工を施す。使用済み燃料棒の貯蔵プールを原子炉容器から隔離する。大型の移動式発電機、貯水タンカー、はしご、ポンプ、ホースを整備し、緊急事態への備えを強化する。より長期的には、放射能や高熱に対する耐性の高いロボットの研究開発を急ぎ、技術者や作業員を危険にさらすことなく必要な作業をすべて行える態勢を整える。さらに国内的、国際的により良い緊急対応チームを組織するなどである。

一部には、高温ガス冷却型原子炉のような、より安全に設計されたとされる原子炉への移行を示唆する大胆な意見もある。これは本当に安全なのか。

制度的な対策の領域についてはどうか。日本には原子力安全委員会、原子力安全・保安院という原子力安全管理機関がある。これらの機関はリスクを予見できていたのか。両機関は、東京電力のような巨大企業に勧告を実施に移させるだけの力を持っていたのか。これらの機関を改革し、電力各社に安全な原子力への取り組みを強化させるには、どうすればよいのか。財務面の罰則を強化すべきか。米プライス・アンダーソン法の日本版と言われる原子力損害賠償法を改正すべきなのか。さらに、民間企業が原発を運営していくことが不適切であるならば、すべてを国営化することを考慮すべきなのか。

将来的な脅威

最後に、テロリストが今回の事故に強い関心を抱いている可能性を指摘しておかなければならない。原発がテロ攻撃の目標となる危険性はかねてから考慮されていた。しかし、原子炉は丈夫な合金で造られ、コンクリートの壁で囲まれており、極めて頑丈な構造となっているため、破壊するのは容易でないという主張も一部にあった。だが今回の出来事は、原子炉自体を破壊しなくとも大混乱を引き起こせることを明らかにした。電力供給装置または冷却システムを破壊しさえすれば、あとは原子炉が過熱してメルトダウンするのを待てばいいからだ。

核兵器の拡散の可能性もさらなる懸念要因であり、一部の科学者は核拡散防止型原子炉の設計を提案している。だが、それによって核分裂性物質が兵器市場に持ち込まれるのを阻止することは可能だろうか。さらに重要なのは、核拡散防止型であると同時に、安全性を既存の軽水炉よりも高められるかどうかである。新型の原子炉設計はすべからく、安全と不拡散という二大目標を全うしなければならない。

私はこれらの疑問の全部には答えを出せていない。だが、原発を受け入れる地域の住民や自治体は、疑問を投げかけ続けざるを得ないだろう。満足のいく答えを得られない限り、既存の原発の運転を続けることは難しく、ましてや新規建設はあり得まい。

日本は、60年前と同じように、瓦礫から再び立ち上がると私は確信している。だが復興に当たっては、より厳しい原子力安全基準を定め、より安全な原発を開発することが不可欠である。

(2011年3月31日 記す、原文英語)

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