3つの重要課題

政治・外交

被災地の復興に向けた動きが本格化しつつある。課題山積の中、政策研究大学院大学教授の竹中治堅氏は、復興にあたって検討すべき3つの重要な課題を指摘する。

3月11日に東日本大震災が起きてから約1カ月が経った。行方不明者の捜索はいまだに続き、原発事故がどのように収束するのかは見えてこない。しかし、復興について考える時期にきている。菅内閣は4月14日に復興構想会議を発足させて検討を始めた。原発事故への対応含め、検討すべき課題はあまりにも多いが、ここでは3つの重要な課題について触れたい。

第一は被災地域の再建・復興である。政府は、津波の被害が今後も予想される沿岸部への居住を避ける形で、復興を考えていると報じられている。これまで住んでいた地域に再び住むことを希望する人も多いはずで、このような方針を立てる際には被災した自治体の同意を得ることが何よりも大事である。

第二は、日本全体の経済活動のあり方を考えることである。東日本において多くの企業の生産拠点が被災した。これが被災しなかった企業の部品調達にも悪影響を及ぼし、日本の多くの企業の生産活動の妨げとなっている。

これについては二つの重要な問題がある。一つは、政府が企業の復旧努力をいかに支援していくかである。具体的には、企業の投資を日本に引きとどめる方策を検討する必要がある。今回、多くの企業の東北地方における生産拠点が被災した。新聞では盛んに復興を目指す企業のことが報じられている。

しかし、中には新たに日本に投資を行うくらいなら、人件費や税制の面でより有利な海外に生産拠点を移そうと考える企業もあるかもしれない。生産拠点を日本に維持してもらうため、政府は税制面やその他の優遇策を講じる必要がある。

既存の枠にとらわれない電力供給策

また、同様に大きな問題は今後、東北地方や関東地方で予想される電力不足への対応である。震災で東北電力と東京電力管内の福島第一原子力発電所が被災する一方、福島第二原子力発電所や女川原子力発電所が運転を停止した。電力需要が増大する今夏、東北地方と関東地方は深刻な電力不足が生じることが予想されている。

現在、政府の対応策の最大の柱は企業や家庭に対し節電を求めることである。しかし、それだけで十分なのか。企業の節電努力は生産活動を妨げることになる。節電策以外にも政府は供給能力の増大策を検討すべきである。政府は供給能力の回復に際し、東京電力や東北電力に委ねることを当然視しているようだが、既存の枠にとらわれず、供給量の促進を図るべきではないか。例えば、両電力会社の送電網を分離し、発電業務への新規参入を促進することも一つの方策である。

負担は長期間に分散

三つ目の課題は復興財源の確保策である。内閣府の試算によれば、被災額は16兆円から25兆円に上る。この数字には福島第一原発の事故に対する補償を含んでいない。補償には政府も関与せざるをえず、これも含めれば膨大な金額が必要となる。既に日本の財政状況は新規国債発行額が税収を上回るなど危機的状況にある。このため、復興および補償に必要な財源をすべて国債で賄うのは無理である。

従って、短期的には国債発行によってかなりの財源を調達するにせよ、復興に必要な財政支出はこれまでの歳出の削減や増税によって賄うべきである。年金など社会保障に関連する支出も一時的に削減できないか議論すべきであろう。また、増税にあたってはマクロ経済に与える影響を緩和するため、負担をできるだけ長期間に分散する策を講ずるべきである。例えば、消費税増税を復興財源とする場合には、長期間にわたって段階的に引き上げることを検討するべきである。

復興政策の実施体制も大きな問題であるが、復興に絡む他の課題と合わせて機会を改めて議論したい。

(2011年4月17日 記す)

東日本大震災