避難民の不安を想像してほしい
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福島放送は福島県を放送エリアとするローカルのテレビ局である。本社は郡山市桑野。東京電力福島第1原発の西60キロメートルに位置する。このため原発近くの市町村と比べると、放射線量の数値は低い。
しかし、それでも首都圏各地の数値の数十倍でここ1カ月あまり推移している。市民の多くが「放射性物質を少しでも吸い込まないように」とマスクを着用、外出を控えめにして暮らしている。3月11日まで原発の周辺地域に住んでいた、そして今は避難生活を余儀なくされている人たちの苦労とは比べものにならないが、やはり不自由だ。
そういう状況の中にいて、かつ放送という仕事に携わっていて思うのは、今回の原発事故に関する政府と東京電力の対応のお粗末さと、官房長官会見や東電広報の会見に出ている記者たちの想像力の欠如ぶりである。
必要なことを何も語らない官房長官会見
4月11日、官房長官は会見で「計画的避難区域」の設定を発表し、こう言った。
「大変なご苦労をお掛けすることになりますが、この区域の住民の方には別の場所に計画的に避難していただくことが求められます」
当然そのあとに、どこどこへ行ってくれ、そこまではこういう方法で行ってくれ、そこで国はこういう用意をしている、家と仕事を捨てて出て行ったあとの生活費についてはこう考えている、といった事柄があるべきだろう。
しかし何もなかった。もし、そういう準備をする余裕がなかったが、とにかく避難する必要があると判断したのなら、正直にそのことを説明すべきだ。「計画的避難が求められる」で話をおしまいにしてはいけない。
官房長官の話がそこで終わったら、その場にいる記者たちは、どこへ行けというのか、どうやって行けばいいのか、普段の生活の場から離れた住民はどうやって暮らしていけばよいのか、と官房長官を問い詰めなければいけない。その区域に住む者の暮らしと命に関わる事柄だからだ。自分の身に降りかかったことだと思えば、あるいは自分の父母や兄弟、祖父母がその区域から避難しろと言われているのだと考えれば、すぐに浮かんでくる質問だ。後知恵で、ニュース番組や新聞記事の中で「ただ避難しろと言われた住民のあいだに戸惑いと不安が広がっています」とやってもだめだ。
住民はこれからどこでどのように暮らせばよいのか
東電の発表とそれを聞く記者の場合も同じだ。3号炉は今どうなっている、これからこういう作業をする、だけで終わるべきでない。その作業が周辺住民(あるいは半径何十キロメートルの地域)にどんな影響を及ぼすのか、あるいは放射能の影響をどれくらい抑えられる作業なのか、を常に語ってほしい。聞いてほしい。
原発事故でふるさとから追い立てられる者の痛みを、政府も東電もそれらの会見に付き合っている記者たちも本当には理解していないのではないかと、つい疑ってしまう。そうした光景が1カ月以上続いていることにもどかしさが募る。
(2011年4月15日 記す)
