孤立から連帯へ
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今回の震災を境にして、日本人のマインドシフトが起きているように思えてならない。震災が起きる前は、日本人は縮み志向で、内向きになっているような印象を覚えた。日本社会全体を見渡して行動するというよりも、自分たちの生活をいかに充実させるかという観点で物事を考える傾向が強かったのは確かだ。インターネットや携帯電話、ゲームなどの影響が、そうした傾向に拍車を掛けたのかもしれない。
このままじゃいけない、一人ひとりが繋がりを持った社会にしていかなければ駄目だと誰もが薄々気付いていたと思う。そうした危機感は都会だけではなく、地方に暮らす人々も感じていたはずだが、個人の価値観を優先させる社会へと向かう動きには歯止めをかけることができなかった。
それが、今回の震災によって変わった。若い世代を中心に、連帯しようという機運が高まってきたのである。自分の内側に向かっていたベクトルが、外側へ、社会へと向き始めたのだ。団結とか、結束とか、現代では死語になりつつあった言葉が、かえって新鮮な響きを持ち始めたのである。「絆」という言葉も甦った。
強烈なリーダーシップが必要
連帯感が生まれた時に必要なのはリーダーシップである。連帯感にシナジーをかけるためには、一つに束ねる力がなくてはならない。ばらばらにやっていては非効率だし、方向性を見失いかねない。復興という目的に向かって邁進するためには、政治的なリーダーシップが不可欠なのである。しかし、政権交代を果たしたばかりの現政権には、政権運営の経験がなく、そうしたリーダーシップは望むべくもなかった。
こうした事態に風穴を開けるためには、集団指導体制を敷いて、党派を超え、復興のためのプロセスに取り組んでいくべきだと考える。小異を捨てて、大同につくべきなのだ。一つの目標に向かって力を合わせていくうちに、新しいタイプの政治家が生まれてくる可能性だってある。
ある意味では、これまでの政治的なしがらみから解放された若い政治家が登場するチャンスでもあるのだ。そうした政治家たちの登場は、これまでの日本の政治の流れをがらりと変えてしまうかもしれない。
世界との繋がりを実感
こうした連帯の動きは国内だけでなく、海外諸国との間にも生まれつつある。世界中から日本を救えという連帯の表明があって、日本人は改めて世界と繋がっていることを実感した。特にフィリピンやバングラデシュ、ハイチ、パプアニューギニアなど日本が援助してきた国から、恩返しともいうべき救援金が寄せられた。
これまで日本は世界の中で孤立し、実は嫌われているのではないかと疑心暗鬼になっていた人も多かったが、世界中から心温まる支援を受けて目頭を熱くした日本人が多かったのも事実だ。
阪神・淡路大震災の時には、スイスの救助犬の受け入れを拒んだ検疫の問題など、当時の規制が厳しく、海外からの支援を受け取れなかった面もあった。しかし、今回は違った。だからこそ、世界の中の日本ということをリアルに実感できた。こうしたマインドシフトは、今後の日本外交や国際交流に大きな影響を与えるに違いない。
(4月26日 談)