アジアとの戦略的連携で復興を

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白石隆氏は、東アジア・ASEAN経済研究センターのシミュレーションを紹介。復興再生のカギは速やかなインフラ復旧とアジアの生産ネットワークとの連携強化だと述べる。

今回の東日本大震災は、東北・関東を中心に、日本に大きな経済的打撃をもたらした。ではその復興再生のためにどのような対策が必要か。それを考える上で、最近、東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)でまとめられたシミュレーションはいろいろ参考になる。多くの仮定を置いた極めて暫定的なものであるが、以下、紹介しておきたい。

東アジア・ASEAN経済研究センターの復興シミュレーション

シミュレーションの基本的な考え方は次のようなものである。今回の大震災からの復興再生において、都道府県を結ぶ基幹輸送インフラは比較的早く回復するだろう。しかし、県内の輸送インフラ、コミュニケーション・インフラ、電気・水道の供給、企業内設備の復旧等にはもっと時間がかかる。

その間、企業は最適な立地を変更し、人々もまた生活環境の良いところに移っていく。そうした企業、人々の行動は経済全体のバランスを変え、その影響は長期間にわたる。その意味で、今回の震災は、福島、宮城、岩手3県を中心とする東北・関東地域に不可逆的影響をもたらす可能性がある。

では、東北の復興再生の対策をどう考えればよいか。

当たり前のことであるが、できるだけ速やかに輸送インフラ、電気・水道の供給等、生活と産業の基盤を復旧することである。その際、「基盤」を人的・社会的基盤もふくめて広くとらえ、人的・社会的資本への投資を重視する必要がある。

もう一つは、アジアの生産ネットワークとのリンクの強化である。そのためには、空と海の両面で物流を強化する必要があるが、特に東北については、高付加価値で軽量な精密機械等の物流を、例えば、仙台空港を24時間運用のハブにするなどして、強化すべきだろう。

那覇空港に設置しているアジア物流ハブとの接続、空港離発着料の減免、空港を利用する国際物流業務から得られる法人所得税控除措置等も検討する必要がある。また、西日本とアジアの海上物流の強化・効率化も、企業にとっての日本の魅力を高めるために必要である。

速やかなTPP参加交渉が必要

さらに、日本とアジアのネットワーク強化の経済効果を高めるためには、制度面を含め、貿易のさらなる円滑化措置が求められる。そのためには、政府は、震災を理由に、環太平洋連携協定(TPP)参加交渉決定を先送りするのではなく、できるだけ速やかにTPP参加の交渉に踏み切る必要がある。

東日本大震災からの復興再生は、スピードが鍵である。その際、われわれとしては、国難に圧倒されて内向きになるのではなく、21世紀における世界とアジアにおける日本の位置付けを戦略的に考え、復興再生に取り組む必要がある。

(2011年5月9日 記す)

東日本大震災 TPP