世界の若者よ、日本に来たれ
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今、久しぶりに日本が面白い。日々重要な議論が行われ、それが東北の復興を機にいよいよ実行に移されようとしている。それは人類文明の歴史において、極めて重要なパラダイム・シフトの端緒である可能性が高い。自然資源をあまり必要としない文化・創造産業による付加価値の創出、自然との共生による安全で豊かな生活レベルの維持・向上という文明への転換である。世界中の若者たちよ、是非日本に来て、この重要な瞬間を体験し、我々との議論と実践に加わって欲しい。
現代文明のジレンマを打開した3.11
このアイデア自体新しいものではない。20世紀には、ローマ・クラブの「成長の限界」以来、物質主義や経済成長偏重というパラダイムからのシフトを促す膨大な量の提言がなされた。しかし現実は何も変わっていない。日常生活における物質的富至上主義は、資源収奪戦、石油価格の高止まり、金融市場の不安定を招き続けている。
なぜ変われないのか? どこの地域にも、これまでの体制をつくり、それゆえにその維持に利益を見出す勢力が政界、財界、学界の各分野の中心にいるからだ。彼らは頭で分かっていても、変われない。豊かな社会では、多くの市民がこのような単視眼的な観点から既得権の維持を望む。そうした状況下では、理想を追い、現状を破壊しようとするリーダーは育ちにくい。一人ひとりのエゴが積み重なった結果、国民のだれもが不利益を被る。民主主義の皮肉だ。
こうした理想と現実のジレンマを打開してくれたのが3.11だ。衝撃的な津波の映像は、「どこかが間違っている。こうしてはいられない」という衝動を生んだ。それが、今日本社会を動かしつつある。1995年の神戸大震災や、9.11などの過去の出来事がこれといった変化をもたらさなかったのと違う。
その理由は第一に、エゴを捨てていたわり合うことで、全体の利益が最大になることを被災者の方々が身をもって示してくれたことだ。第二は原発稼働停止による電力不足という紛れもない現実だ。東京やその近郊の市民は、この夏は、今までのような生活を続けていたら、電力需要のピーク時を乗り越えられないという切実な現実に直面した。そしてそれは東京逃避ではなく、実効性のある節電、省エネ運動の力強い流れを生んだ。
個人と民間企業が主導する新しい時代
そうした動きに最も迅速に反応したのは、政府でも学者でもなく、個人と企業である。LEDの増産や、電気自動車のための高性能バッテリーの開発・増産、太陽光や風力による発電技術の進歩や施設の建設など、これまで技術的には可能だが、経済性がないので見送られてきたことが、次々と起こりつつある。才能と資金がこの分野につぎ込まれている。日本のもてる先端技術がこの動きをバックアップしている。また世界中からアーチストを招いて住まわせ、街づくりの過程でそのセンスを生かそうというアイデアもある。つまり、日本の誇る先端技術と洗練された文化をともに活用するということだ。
今こそ何かが変わっていく予感がする。若者たちよ、この心躍らせる瞬間を日本で共有しよう。学生も、若い研究者も、アーチストも、放射能漏れのニュースに過剰反応せず、ともかく日本に来てこの歴史的瞬間を一緒に過ごそう。日本は君たちの叡智を求めている。6月25日に菅総理に提出された東日本大震災復興構想会議の提言『復興への提言-悲惨のなかの希望』は、「開かれた復興」(第4章)をモットーとしている。
(7月4日 記す)