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北の大地—物語に満ちた魅力を語る

清野 由美 (聞き手)【Profile】

[2017.12.20]

日本に関心を持つ中国人に日本の素顔を紹介する雑誌『在日本』を刊行し、神戸国際大学教授でもある毛丹青さんが、中国メディアを率いて初冬の北海道を取材している。毛丹青さんが雪に覆われた北の大地を語る。

毛 丹青

毛 丹青MAO Danqing中国北京市生まれ。北京大学卒業後、中国社会科学院哲学研究所を経て、1987年初来日し商社に勤務。2000年バイリンガル作家に転身、08年YOKOSO JAPAN大使。主な著書に『にっぽん虫の眼紀行』など。

今、なぜ北海道なのですか?

毛丹青 上海で私が発行している雑誌『在日本』の取材チームに加えて、中国の大手新聞の記者や映像作家ら、20代を中心としたメンバーを初めて冬の北海道に誘いました。彼らの中には、北京のラジオ局の人気DJもいるんですよ。この取材ツアーを組んだのは、中国の若いメディア関係者に、冬の北海道の魅力を知ってもらい、それを中国に向けて積極的に発信してもらうためです。

どんなルートで北海道入りしたのでしょうか?

 初日は新千歳空港から車ですぐに行ける「ノーザンホースパーク」を真っ先に訪ねました。その後、十勝、阿寒湖、摩周湖、と巡って、最後は知床、網走にまで行くことにしています。知床と網走は、私も初めてですので、今からとても楽しみにしています。北方領土も望めると聞いています。

こうしたユニークな北海道ツアーを組もうと思い立ったきっかけは何ですか?

 2004年に、後にノーベル文学賞を受賞する作家で、私の親しい友人でもある莫言(モー・イエン)氏を案内して北海道を旅行したことがありました。莫言氏は、北海道の面白さを、質の高い書籍、雑誌、新聞を通して中国に紹介し、中国の人たちが北海道に関心を持ってくれるきっかけを作ってくれました。その時は個人レベルの発信でしたが、あれから13年がたち、今回は若い人たちのチームで新たに北の大地を取材しようと企画してみました。

毛丹青さんが感じる北海道の一番の魅力とはなんですか?

 初日のノーザンホースパークの印象はとても鮮烈でした。まず何よりも広々として、雪景色の大地がすばらしい。日本は小さなところに美が宿る国ですが、北海道はその美意識とは違う雄大なスケール感があります。

今回のメンバーは、中国の広州や安徽省など南の方から来た人も多く、雪を見慣れていないメンバーたちは、ことのほか喜んでいました。中国にも雪は降りますが、大気汚染のせいで雪景色は薄汚れています。その意味でも、中国人の旅行者にとって、北海道の純白の雪景色は格別なものなのです。

そうした景色と並んでもう一つ、すばらしいのは豊かな彩の「食」でしょう。到着した日の夕食は、フランス料理のコースだったのですが、食材には、カニ、ウニ、十勝牛やサラダ、と海の幸、山の幸、畑の幸がふんだんに使われていて、自家製のパンやデザートのソフトクリームもおいしかった。北海道の食べ物は、何よりも素材自体がおいしいですね。そのような食事の時間を、みんなで冬景色を堪能しながら会話を楽しみ、ゆっくりと分かち合え、幸せな気持ちになりました。

中国の人々を惹きつける北海道の魅力の真髄とはなんでしょうか?

 一番に感じるのは、この大地には「物語」の力が宿っているということです。

ノーザンホースパークでは、慈しみながら競走馬を育てている女性との出会いがありました。彼女と馬が向こうから歩いてきた光景には、はっとするものがありましたね。馬がその頭を彼女の肩にもたれ掛けているではありませんか。すぐにカメラを回して、インタビューを行いました。彼女は小さいころから、馬とともにいられる仕事がしたいと望んでいたそうです。その望みがかなって、北海道にやってきて仕事をしている。その心意気にみんなが共感していました。

中国からの旅行客というと、団体で目立つ、というステレオタイプのイメージがいまだに拭えていませんね。

 今、中国人旅行者にとって、北海道のインバウンドは、第2のステージを拓こうとしています。今までのインバウンド観光は、グループで体験する「景色」と「食」で終わっていて、今回のような人との出会いはありませんでした。でも今は第2ステージ。ツアー客は減って、個人客の比率が圧倒的に高まってきています。個人が個人とコミュニケートすることに、価値が移っているのです。

今日も空港で、地図を広げて、お店の女性店員に何かを尋ねている若いカップルを見ましたよ。道に迷ったり、おいしいレストランを探したりと、そういう場面で、土地の人々に小さなヘルプを求めることで、コミュニケーションが深まっていきます。空港のお店では、中国語が分からない店員さんが、一生懸命、やりとりをしている姿が心に残りました。

毛さんは北海道に対して、個人的な興味もありますか。

 私は神戸国際大学で教授を務めていますが、この大学を創立した八代斌助(やしろ・ひんすけ)が北海道出身です。彼は明治33年(1900年)に函館で生まれ、釧路で育ち、東京の立教大学に進んだ時に、キリスト教の伝道者、教育者として生きていく道を選びました。

大柄な体格で、若い頃は相撲も取っていたなど、逸話の多い人物で、19歳のときには中国の青島に渡って、誰もいないチャペルを、一人で守っていたそうです。彼の人生はドラマにできますよ。その下地に北海道での少年時代があったことと思います。私の尊敬する人物の故郷を訪ねることができて、その点でも北海道は私の感性を揺さぶるものがあります。

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  • [2017.12.20]

ジャーナリスト。1960年東京都生まれ。東京女子大学文理学部卒業。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修士課程修了。在学中、英ケンブリッジ大学客員研究員。出版社勤務の後、92年からフリーランス。国内外の都市開発と地域コミュニティ、ライフスタイルの転換を取材する一方で、時代の先端を行く各界の人物記事に力を注ぐ。『アエラ(現代の肖像)』『朝日新聞』『日経ビジネスオンライン』などで記事、コラム、インタビュー、書評などを執筆。著書に『住む場所を選べば、生き方が変わる』(講談社)など。

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