• 碑に刻まれたメッセージ —先人が残した災禍の記憶— 

    「天災は忘れたころにやって来る」。物理学者・寺田寅彦(1878~1935)が遺した警句である。「知らなかった」「想定外だった」―大事故や災害で人命が失われると必ずといっていいほど聞く釈明だ。先人は過去の教訓を忘れてしまう人間の愚かしさを見抜き、消してはいけない記憶を「碑」に刻んだのだろう。国土地理院は2019年、天災を後世に伝える碑の記号「自然災害伝承碑」を新たに作成した。地理院地図に掲載されているのは2023年2月時点で2081基。このリストを出発点に先人が遺した災禍の記憶をたどる。「想定外」や「知らなかった」を1つでも減らすことを願う。

    写真 : 岩手県宮古市重茂姉吉地区の大津浪記念碑。1933年の昭和三陸地震後に建立された。「高き住居は児孫の和楽、想へ惨禍の大津浪、此処より下に家を建てるな」と刻また教えを守り、東日本大震災では家屋被害はなかった。(PIXTA)