暮らしの和コロジー

“セコロジー”なんて言わないで!

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たとえ小さな努力でも積み重ねれば大幅な省エネにつながる。東京近郊のマンションに住むいわゆる「普通」の家庭が取り組む節電の工夫を紹介。


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東京のベッドタウン、千葉県・柏市。東京大学や千葉大学のキャンパスがある「柏の葉キャンパスシティ」は、秋葉原駅から「つくばエクスプレス」でおよそ30分。住民、行政、大学、企業が一体となって、環境との共生をテーマとする街づくりを進めている。住民が参加する「まちのクラブ活動」が盛んなのも特徴。

何のための節電? 「地球環境のため」という答えは当たり前。しかし一般家庭の本音を言えば、何よりまず電気代が安くなるから。思わず「セコロジー」と呼びたくなるような徹底した節電努力で、電気代を大幅に下げることに成功した瀬川未来(せがわ・みく)さんのお宅を訪ねた。

瀬川さんがこのマンションに引っ越してきたのは3年前。入居後しばらくして、地域サークル「柏の葉エコクラブ」に加入してエコにめざめた。「当初、私の中では、地球環境という大きな問題に取り組もう、という意識はなかったんです。エコクラブに入ったのも、入会すると500円の商品券がもらえると勧誘されたのがきっかけだったし」と照れくさそうに語る。

クラブで節電のポイントを教わり、3カ月後の検針で成果をチェックするのが第1段階。「このときにまた商品券がもらえると言われて(笑)。でもそれより、言われたとおりにやってみたら最初の月で電気代が9000円から7000円に下がったんです。これはがんばろうと思いました。今では電気代は月平均で5000円くらい」。無自覚に電気を使っていたときのほぼ半分だ。

柏の葉キャンパス駅の目の前に広がる高層マンション街「パークシティ柏の葉キャンパス一番街」

柏の葉キャンパスシティの住民が参加する「まちのクラブ活動」のひとつ「柏の葉エコクラブ」。“楽しいエコライフの実践”をテーマに活動。会員はおよそ200世帯。定期的に集まって情報交換やイベントを行いながら、住民のエコ意識を高め合っている。

こうして「電気代半分」を達成!

では、瀬川さん宅の間取り図を見ながら具体的にどのように「電気代半分」を達成したのか見てみよう。

1 まずは電球の「間引き」。例えば玄関の照明は4個から1個に。これでも十分に明るい。ここもあそこも、と外しているうちに、使わない電球の数は17個になった。全部使い切ったらLED電球に切り替えるつもりだが、ストックはなかなかなくならない。

2 いまや日本の家電製品は、省エネを考慮せずには売れなくなった。特に冷蔵庫、洗濯機、エアコンは、その技術の進歩が著しい。冷蔵庫内には「カーテン」を 付けて保冷効率をアップ。「小さな工夫と努力を惜しまない」が節電の秘訣だ。瀬川さん宅では、この夏もエアコンなしで過ごした。

3 必要のない電気製品は、プラグを抜く、あるいはブレーカーをOFFにする。例えば便座の暖房。日本製品の特徴でもある「超・親切設計」の最たるものだが、冬はともかく夏はまったく不要。意外と気づいていない家庭が多いかも。

4 小林前環境事務次官も推奨する二重サッシ。ここにさらに断熱シートを張る。断熱カーテンと合わせれば、外気熱の遮断にかなりの効果。

5 さらに「柏の葉エコクラブ」では希望する家庭に、こうした細かい節電の効果をモニタリングできる機器の無料設置を行っている。 10分ごとの消費電力量がパソコンでチェックでき、その時点で電気代がいくらになっているかが一目瞭然。炊飯器や掃除機を使ったときに数値が跳ね上がっているのがわかる。

「エコ」はご近所付き合いから

ただし、瀬川さんがエコクラブの活動に熱心になった最大の理由は「仲間」。入会して間もない頃、足を骨折したことがあった。ケガを聞きつけて集まってきた近所の会員たちが、ご飯をつくってくれたり、家事を手伝ってくれたりした。「あのときは本当に助けてもらいました」。以後、付き合いは「家族同然」になった。

今も毎日のように互いの家を行き来する。それは「エコ効果」にもつながる。大人数で食事を共にし、同じ空間で過ごせば、それだけ電力消費も少ないからだ。地震の直後も、近隣の住民が集まって過ごすことで、不安を感じずにすんだ。特に小さな子どもたちにとって、この安心感は大きな救いだったはずだ。「笑顔を呼ぶエコ(笑呼)が合言葉」というエコクラブ。無理せず楽しみながら、身近なところからエコ意識を高め合うことに成功している。

写真=川本 聖哉
取材協力・一部画像提供=柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)

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