nippon x fashion 2012

世界に進撃する若手デザイナー12選

社会 文化

ファストファッションが世界を席巻する中、こだわりのある服作りを続けるデザイナーは多くはないが確かに存在する。日本のファッションの「いま」と「これから」を感じさせる気鋭12ブランドの作品を厳選して紹介。

nipponファッション・カタログ 2012

(アルファベット順)
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企画・取材・構成=矢田 明美子

AKIRA NAKA アキラ ナカ

アントワープ王立芸術アカデミー在学中の2005年、新人の登竜門「イエール国際モードフェスティバル」に選出される。その後アントワープで著名ブランドを手がけるニットデザイナーに師事。帰国後、2007年にブランド「POESIE」をスタート。2009年春夏よりブランド名を「AKIRA NAKA」に変更し東京コレクションで発表。生地にニットが徐々にとけ込んでいくような「グラデーションニット」という独自のテキスタイルを生み出すなど、そのニットデザインには瞠目させられるものがある。2012年春夏コレクションのテーマは「VANERN」。北欧からインスピレーションを受け、独特な色合わせや穏やかな空気感がにじみ出るコレクションを発表した。

http://www.akiranaka.com/

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ANREALAGE アンリアレイジ

デザイナー森永邦彦(1980年生まれ)が、早稲田大学、バンタンデザイン研究所キャリアスクール卒業後、2003年から活動を開始。ANREALAGEというネーミングは、real、unreal、ageをミックスし、「リアルでありながら、リアルでない時代」というねじれを内包している。古着のリメイクに始まり、「神は細部に宿る」を信念にマニアックなクラフトワークを探求。2005年、ニューヨークの新人デザイナーコンテスト「GEN ART 2005」でアバンギャルド部門大賞を受賞。2011年、毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞を受賞。2012年春夏は「SHELL」と題し、脱ぎ捨てられても形として残る殻に注目した作品群を発表した。

http://www.anrealage.com/

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CHRISTIAN DADA クリスチャン ダダ

森川マサノリ(1984年生まれ) が「CHARLES ANASTASE 」「LIVRAISON 」を経て、2010年秋冬よりスタート。「着る」という概念だけにとらわれず、アイデンティティ表現のひとつの「ツール」としての服作りを目指す。 2011年MTVビデオ・ミュージック・エイド・ジャパンに出演したレディ・ガガの衣装を手がけた。2012年春夏では、「SIGNAL/NOIZE」と題し、死について考え続けてきた森川がアーティスト集団「ダムタイプ」の作品「S/N」からインスパイアを受け、 「SIGNAL=布 」 「NOIZE=ミクストメディア 」を混ぜ合わせることで、 死のアイコンである「骨」を可視化させることに挑んだ。

http://www.christiandada.jp/

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FACETASM ファセッタズム

落合宏理(ひろみち)(1977年生まれ)が文化服装学院を卒業後、テキスタイル会社「ギルドワーク」勤務と同時にNGAP(服から内装までを手がけるアーティスト)のアシスタント経験を経て、2007年秋冬よりファセッタズムをスタート。
これまで展示会形式で発表してきたが、2012年春夏の東京コレクション最終日のイベント「VERSUS TOKYO」において、初のランウェイショーを見せた。「To be crucially free —決定的に自由であるために—」をテーマに「いま、ここ」の時代性を追求。柄物を重ね合わせたり、エスニックとトラッドを混ぜたりというスタイルに、今の東京の若者が感じる等身大の自由が表現されている。

http://www.facetasm.jp/

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MATOHU まとふ

堀畑裕之と関口真希子によって2005年に設立。ともに文化服装学院アパレルデザイン科からパタンナー勤務を経て渡英。2003年からイギリスでコレクションの仕事を経験する。2004年に帰国した翌年「まとふ」をスタート。

2009年 第27回毎日ファッション大賞の新人賞および資生堂奨励賞を受賞。ブランド名には「纏う」と「待とう」の意味があり、日本独自の服に対する美意識と、時間をかけて物事を感じとることを大切に、というコンセプトに通じる。2012年春夏コレクションは「映り」をテーマに、7月に表参道にオープンしたショップにて行われた。

http://www.matohu.com/

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MIKIO SAKABE ミキオ サカベ

アントワープ王立芸術アカデミーファッション科を主席卒業した坂部三樹郎(1976年生まれ)と台湾出身のシュエ・ジェンファン(Shueh Jen Fang)によるブランド。2007年秋冬パリコレクションでインスタレーション形式で発表しスタートを切る。2008年春夏からはパリと東京で発表。2011年秋冬では、ファッションとアキバカルチャーの融合イベントとしてのショーを行い、アイドルグループ「でんぱ組.inc」をランウェイに登場させるなどして話題をさらった。

2012年春夏は「HOLY」がテーマ。前シーズンとは一転してガーゼ素材を多用したパステルトーンのリラックス&ナチュラルな世界観を見せた。

http://www.mikiosakabe.com/

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motonari ono 小野原誠

目白デザイン専門学校を卒業後、2002年に渡欧。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションとアントワープ王立芸術アカデミーで学ぶ。2004年からBora Aksuの下でチーフパタンナーとして経験を積んだ後、2006年に自身のブランドをスタート。2010年、世界最大級のコンテスト「マンゴー・ ファッション・アワード」でファイナリストに選出される。2012年春夏は、「Un club de nuit secret」と題して、パリの秘密ナイトクラブをイメージしたコレクションを発表。コルセットやガーターベルトなどランジェリーのディテールをオリジナルのテキスタイルや独自のレース使いで表現。東北の工場で作られたニットを用いるなど、震災後の日本を盛り立てようとする意識も強い。

http://www.motonari-ono.com/

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SAPHIR EAST サフィア・イースト

2007年春夏よりスタートしたブランド。デザイナーも同名のSAPHIR EASTとされており、海外生活を経て様々なメゾンでの経験がある、という以外、一切の情報が明らかにされていない。その存在同様、神秘的なデザインが特徴。旅の記憶やヨーロッパで出会った絵画や花などからインスピレーションを受け、自由な発想で好きなものをクリエイトしていくというスタンスだ。レディ・ガガが来日してトーク番組に出演したときに「玉ねぎ」と話題となったブラックレザーの球体ドレスもSAPHIR EASTの作品。LAのセレブ御用達ブティック「Church boutique」などで取り扱われている。現在国内ではオーダーのみで展開。

http://www.saphireast.jp/

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SASQUATCHfabrix. サスクワァッチファブリックス

2003年よりスタートした二人組デザイナーWonder Worker Guerrilla Bandによるメンズブランド。服作りだけでなくアート展に参加するなど幅広い活動を展開する。2012年春夏は「JAPONISM SUNBEAM」と題し、日本の伝統的モチーフを洋服に落とし込んだ。とはいえ、ありきたりの「和」の技法や柄を採り入れるだけにとどまらず、「和」の中に存在する「粋」の格好よさをファッションとして見せた。過去のシーズンテーマ「ZENARCHY」「MODERN NINJA」を継承して、日本的なものに焦点を当てたコレクションを続けている。震災後の日本に対するエールの意味も込められている。

http://www.sasquatchfabrix.com/

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SOMARTA  ソマルタ

2006年に廣川玉枝のデザインプロジェクトとしてスタートし、2007年春夏より東京コレクションに参加。「身体における衣服の可能性」をコンセプトとするボディウエア「Skin series」を打ち出す。第25回毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞を受賞。トヨタやCanonとのコラボレーションによるインスタレーションの他、ニューヨーク、インド、ロシアなど海外でも精力的に作品を発表。2012年春夏コレクションでは、太古から現代まで地上のあらゆる場所で進化を続けてきた鳥類をテーマに、時空を超えた神秘的な生命力をグラフィカルに表現した。レディー・ガガが公私にわたって愛用するブランドとしても知られる。

http://www.somarta.jp/

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writtenafterwards リトゥンアフターワーズ

ロンドンの美術学校で出会った山縣良和(やまがた・よしかず)と玉井健太郎が中心となって2007年に設立(玉井は2009年脱退)。ファッションデザインを「人間の様相、流行のデザイン」と捉え、教育、社会、文化、環境的観点を持ったコミュニケーションツールとしての役割を提案する。デザイナーの山縣良和は2005年 セントラルセントマーティンズ美術大学ウィメンズウェア学科卒業。「ITS#3」にて3部門受賞。ジョン・ガリアーノのデザインアシスタントを務めた後、リトゥンアフターワーズ設立。2012年春夏は、来場者にしか内容を知らせない秘密のショーだった。(写真は2011年秋冬コレクション「究極の成熟したガーリーファッション」。撮影者:上段Chikashi Suzuki、中段Kanako Sasaki)

http://www.writtenafterwards.com/

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YUIMA NAKAZATO  中里 唯馬

1985年生まれ。独学で服作りを開始し、高校卒業後べルギー・アントワープ王立芸術アカデミーファッション科に入学。イタリアの国際コンテスト「ITS#7」など多数の受賞歴をもつ。卒業後2009年より自身のブランド「YUIMA NAKAZATO」を立ち上げ、パリを中心に活動を続ける。Black Eyed Peasのファーギーやレディー・ガガなど、アーティストへのオーダーメイド衣装もデザインし注目を集める。2011年春夏・東京コレクションにて、メンズウェアコレクションを発表。2012年春夏では、ジェンダーを超越する世界観を展示会と写真集で表現した。(写真は2011年春夏のランウェイ)

http://www.yuimanakazato.com/

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